サザンオールスターズ 40年分の愛と感動と言葉遊びのBIGWAVEが押し寄せる

レビュー

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サザンオールスターズ 40年分の愛と感動と言葉遊びのBIGWAVEが押し寄せる

[レビュアー] 田中稲(ライター)

 『サザンオールスターズ公式データブック1978-2019』。バンドの誕生から国民的バンドへの成長、無期限活動休止から再開などサザンオールスターズの歴史、そして彼らを支えてきた関係者たちの証言―――。サザンという型破りのバンドから抽出された40年分のエキスはあまりにも濃厚、データブックというよりは、「エネルギーの塊」であった。

 小貫信昭氏によるサザンの40年を追うヒストリーは、最高にエモーショナル。かといって読み手を置いていく一方的な熱さはなく、絶妙なユーモアを交えた筆致で進んでいく。これはとてもありがたく、素直に、かつ心地よい疾走感を覚えながらサザンオールスターズの軌跡(奇跡)を一緒に追うことができた。

 思わず口元が緩むエピソードも盛りだくさんである。40歳以上の人なら、サザンファンならずとも強烈に覚えているであろう音楽テレビ番組『ザ・ベストテン』での初出演の衝撃。あの「ただの目立ちたがり屋の芸人です」発言の裏エピソードは個人的に興味深かった。

 そして、40年の活動の中で、メインのレコーディングエンジニアはたった5人しか変わっていないという事実にも驚いた。本書にも記されているが、これは桑田佳祐がスタッフを信頼し、しっかりと向き合っている証明であろう。その“5人衆”猪俣彰三、池村雅彦、今井邦彦、林憲一、中山佳敬の「音の証言」では、シャウト一つにもこだわり、リテイクを何度も繰り返す、繊細な音職人としての彼らの姿が浮かび上がってくる。

 サザンオールスターズはけっして自由気ままやり放題なバンドではない。「挑戦と探求、そして模索」のバンドであった。私は「天才」というあまりにも単純な固定イメージでサザンというバンドを見ていたのかもしれない。そう猛烈に反省し、もう一度アルバムを聴きたくなった。嗚呼、特に『KAMAKURA』が聴きたい!

ずらり並ぶタイトルに誘われタイムトラベルの旅へ

 サザンの40年の歩みやエンジニアたちによるエピソードを存分に堪能したあとも、本書のハイテンションはまだまだ続く。

 怒涛の如く押し寄せる圧巻のシングル・アルバム・映像作品全リスト、そして全ツアー・コンサートのセットリスト! しかもメンバーのソロを含めて、である。これを一気見できる機会などそうそうない。

 こういうときはやはり紙。ペラペラとページをめくるごとに襲い来るロマンチックなタイトルに浸る。サザンの醍醐味のひとつは、言葉遊びや語呂合わせの威力である。CDジャケットを見るだけで鼻歌が自然に出てくるくらい歌詞が身に沁み込んでいるものもある。ドキドキした曲がぶわりと波のように押し寄せる。それを聴いて泣いた青春時代までプレイバックして胸が苦しい……!

 アルバム曲リストでも、その悔しいほどのワードセンスに悶え、短編集を読んでいるようにストーリーが広がっていく。エッチと洒落と雅の融合。桑田佳祐という人は日本語が本当に好きなのだなぁ、と膨大なリスト読み返し感動した。

 デビュー40周年の2018年「壮年JUMP」が発表された時も、その腹が立つほど洒落たタイトルに「やられた」と額を叩き、ニンマリしたものだが、サザンの曲には、常にその「やられた」とニンマリがついてくる。これはすごいことだ。

 もっともっと歌詞を読みたい、もう一度、全曲を聴きたい。
 サザンの足跡をもう一度たどるノスタルジーに浸るだけではない。これからもサザンオールスターズの、悩ましくうねる言葉と音楽に「やられた」と何度もニンマリさせられるであろうことを確信した、熱くて厚い一冊であった。

リットーミュージック
2019年7月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

リットーミュージック

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