『トップ2%の天才が使っている「人を操る」最強の心理術』
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MENSA所属の心理戦略コンサルトが教える。「行動原理」の分析術
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『トップ2%の天才が使っている「人を操る」最強の心理術』(山本マサヤ著、河出書房新社)の著者は心理戦略コンサルタント。
2014年に、全人口の上位2%の知能指数(IQ)を持つという天才集団「MENSA」(IQ130以上)の入会テストに合格したのだそうです。
IQが150あり、日本のMENSA会員のなかで唯一といえる心理学のプロ。
つまり本書は、そんなバックグラウンドに基づいて書かれているわけです。
本書のゴールは、人を操る天才になるための「先表武器」を身につけていただくことである。
人を操るには知識と知能が結びつかないとうまくいかないが、そもそも人間というのは「感情」に支配されやすい。これは知能が感情の影響を受けるからだ。
せっかく身につけた知識を使うときに、感情は邪魔になることがある。感情に支配されていては、知能も知識も最大限に活かすことはむずかしい。
そこで相手を操る方法(外敵心理テクニック)だけでなく、自分を操る方法(内的心理テクニック)も必要になってくる。(「はじめに」より)
きょうは、まずマスターすべきだという第3章「人を操る3つの基本原則」のなかから、「人を操る基本原則1 相手の一貫性を理解する」を抜き出してみることにしましょう。
相手の「一貫性」を理解する
「相手の一貫性を理解する」とは、共感力が必要だということだそうです。たとえばなにか問題が起きたとき、その原因について、
「なぜ問題が起きたのか?」
↓
「注意不足だった」
↓
「なぜ注意不足が起きたのか?」
というように「なぜ」を繰り返し、問題の根本的な原因を探り当てていくことが重要だということです。
相手の発言や行動をひとつひとつ理解していくと、やがてその先に「一貫性」が現れるといいます。そして大切なのは、その一貫性を理解すること。
なぜならそれは「行動原理」ともいえるもので、相手の発言や行動の根底にあるものだからだというのです。
なお相手の一貫性を理解できれば、そこから生まれる相手の発言や行動を予測することも可能になるそう。
つまり、相手の発言や行動に対して「なぜ?」を繰り返していき、その一貫性にたどり着くことができれば、相手の発言や行動を予測できるようになるということ。
相手の一貫性を理解することは「人を操る技術」の初歩であり、もっとも重要な心理テクニックなのだそうです。
「なぜなぜ思考」を身につける
なお、相手の一貫性を特定する方法として著者がおすすめしているのが「なぜなぜ思考」。相手の発言や行動に限らず、髪型や服装、腕時計、スマホ、口癖などすべてにおいて、
「なぜ、その髪型を選んだのか?」
「なぜ、その口癖を言うのか?」
というように、相手がそれを選んだ理由について深く考えていく。
そして、それらの意味の仮説を立て、そのなかから共通点を探し出し、一貫性を特定するということです。
それは、具体的にどのようなものなのでしょうか?
たとえば著者は、次のような過去の分析例を挙げています。
例①
男性で髪にワックスをつけて爪を磨いていて服にシワがない場合、「マメ」「ストイック」「几帳面」という一貫性がある。
こうした一貫性に基づくと、その人は部屋が片づいていて、自己投資にぬかりがなく、ルールを守るタイプだと判断できる。
例②
私服やバッグを暗めの色で統一している人は「色合いにこだわる」という一貫性がある。部屋の中もモノトーンで統一感があり、他の人より自分のこだわりに敏感な場合が多い。
会話において、その人のこだわりを引き出して共感すれば、強い信頼関係が築けるだろう。
例③
ガニ股など、パーソナルスペースを広くとって歩く男性が綺麗な女性の腰に手を回してブランド品のバッグを乱雑に持っている場合、その人は「独占欲」「ブランド思考」という一貫性がある。自分に自信がないため、自分を意図的に大きく見せることが多いと予想できる。
だから、女性の腰に手を回して安心感を得ていたりする。 周りからの評価を気にするので、その人に取り入りたいなら、所有物をうらやましがることが有効だ。
(以上、67~68ページより)
観察を軸として立てた仮説を検証し、当てはめてみるトライ&エラーを繰り返せば、一貫性を特定する精度はどんどん高まっていくのだといいます。
だからこそ、くじけることなく「なぜなぜ思考」を続けるべき。それは、一度身につければ強力な武器になるものだから。
コナン・ドイルによる『名探偵シャーロック・ホームズ』のモデルとなったジョセフ・ベル博士は、外科医であると同時に、天才的な観察力と推理力を持っていたそうです。
往診患者を観察することで、病状はもちろん、性格や経歴などを言い当てることができたといわれているのです。
ジョセフ・ベル博士は、この自身のスキルについてこう言っている。 「ただ見る(see)のではなく、観察(observe)せよ」(68ページより)
こうした理由があるからこそ、相手の発言や行動、髪型、服装、趣味趣向などについて「なぜなぜ思考」を繰り返すことが重要なのだと著者は主張しているのです。(61ページより)
偏差値が高いから天才だということではなく、IQが高いから天才だというわけでもないと著者は主張しています。
自分の持つ可能性を高める努力をした人が天才になるのだと。
なるほどそれは、エジソンが残した「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」ということばにも明らかです。
生まれつきの天才は存在せず、努力をして、世の中に価値を生み出すからこそ天才になるのだという考え方。
ただし、世の中に生み出す価値が大きいほど、ひとりでできることには限界が見えてくるのも事実。
だからこそ、ひとりではできない問題を解決するために、本書を活用してほしいと著者は言うのです。
Photo: 印南敦史
Source: 河出書房新社