『こけし図譜』
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<東北の本棚>にじみ出る素朴な魅力
[レビュアー] 河北新報
イラストレーターの著者は12年前、東京都内の民芸品店で伝統こけしに初めて出会った。他の郷土玩具とは異なる引力を感じ、のめり込むようになったという。東北6県にある産地に足を運んで工人の話に耳を傾け、こけしの絵を実際に描いて、にじみ出る魅力の源泉を探った。
伝統こけしは青森県の津軽系から福島県の土湯系まで11系統に分類。頭と胴だけで構成されたシンプルな木の人形だが、構造や形、染料と墨で彩描した顔と模様は系統ごとに異なる。著者は全11系統の歴史や風土をたどり、工人たちの声を丹念につづった。
「伝統こけしにも現代性や新しさというものは可能であり、それをどう入れていくのかが、重要なことではないかなと考えています」。1990年生まれ、宮城県の鳴子系で最も若い工人の松田大弘さんは意欲を見せる。土湯系の西山敏彦さんは「美術品とかではなく、お土産とか玩具だと思いますから、素朴で楽しいものが作りたいです」と語る。
伝統こけしの本質をつかみ取ったイラストをふんだんに用い、各系統の特徴を分かりやすく解説している。産地の施設、工房訪問の際はガイドブックとして役立つ一冊だ。
著者は1983年東京都生まれ。雑誌、書籍を中心に活動し、絵本も手掛ける。「東京こけし友の会」の会員。
誠文堂新光社03(5805)7765=1980円。