<東北の本棚>首相権限の強化に着目

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平成政治史

『平成政治史』

著者
大嶽 秀夫 [著]
出版社
筑摩書房
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784480073051
発売日
2020/05/07
価格
1,100円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>首相権限の強化に着目

[レビュアー] 河北新報

 冷戦終結とともに始まった平成(1989~2019年)は、どんな時代だったのか。東北大・京大名誉教授の政治学者が国内政治の変遷をたどり、激動の30年間を読み解いた。
 筆者は1990年代半ばを日本政治の転換期と位置付ける。元年の89年にリクルート事件が起き、政治不信が深まった。「政治とカネ」の問題は自民党の下野へつながり、93年に非自民連立の細川護煕政権が誕生。自民、社会両党の対立構造が軸の55年体制が終わり、政治の争点は政治や行財政などの改革に移ったという。
 「平成の自民党」の特徴として「首相権限の強化」を挙げる。94年に細川政権下で衆議院の小選挙区比例代表制が導入され、政治の仕組みが変わった。それまでの中選挙区制は「首相選出が派閥の均衡の上で行われ、首相権限を著しく制約」したが、小選挙区制は「党首のイメージが決定的な重要性を持つ」。官邸主導型の政治手法が際立つ安倍晋三首相までの各政権の取り組みを通し、政策決定や人事など各分野で権限が強化されていく過程を解説する。
 各政党の動きを追うほか、社会運動や外交、原発問題にも着目。社会運動については、ヘイトスピーチを繰り返す「在日特権を許さない市民の会」(在特会)と安全保障関連法に反対した学生団体「SEALDs(シールズ)」を並べ、若者中心の「普通の人々」による気軽な参加形態を共通点に挙げた。
 自民党に関する章の結びは「首相候補の育成機能を持っていた派閥が弱体化し、後継者が全く見えない」と現政権の課題を示す。検察幹部の定年延長問題や新型コロナウイルス対応を巡って内閣支持率は下落傾向にあり、昨今は「ポスト安倍」への関心が高まる。著者の懸念が現実味を帯びてきた。
 著者は43年生まれ。「再軍備とナショナリズム」など著書多数。(和)

河北新報
2020年7月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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