人に手を差し伸べ、ともに進む尊さ 『彼女たちの部屋』レティシア・コロンバニ・著、齋藤可津子・訳

レビュー

10
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

彼女たちの部屋

『彼女たちの部屋』

著者
レティシア・コロンバニ [著]/齋藤 可津子 [訳]
出版社
早川書房
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784152099389
発売日
2020/06/18
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

人に手を差し伸べ、ともに進む尊さ

[レビュアー] 三浦天紗子(ライター、ブックカウンセラー)

 百年の時を隔てて描かれるふたりの女性の物語だ。現代パートを生きるソレーヌは、有名法律事務所で企業訴訟をいくつも手がけてきたエリート弁護士。しかし、パートナーとの破局と敗訴によるクライアントの自死によって大きなショックを受ける。〈燃え尽き症候群〉と診断され、そのリハビリとして、ソレーヌは〈連帯の羽根協会〉を介し、困窮女性のための施設で代書人のボランティアを始める。

 最初は、施設に住む人種差別やDVなどで傷ついた女性たちに警戒され、〈誰からも必要とされていない〉悲哀を味わうが、彼女自身、路上に座り込んでいる女性たちを見て見ぬふりした後ろめたさを振り払いたいのだ。協会はパリ十二区、居住スペースと大きなホールやジムなどを内包する実在の歴史的重要建造物「女性会館」内にあり、百年の間、困窮した女性たちを守ってきた。過去パートで描かれるのは、その「女性会館」を夫アルバンとともに設立したブランシュの活躍だ。病魔に冒されてもなお成果をつかみ取る、希望のパートでもある。

 男女平等の建前すらなかった百年前の方が、生きる上ではつらいはずなのに、女に生まれた悲劇に唇を噛むのは、むしろ現代を生きる女性たちの方というのが苦い。それでもソレーヌは、スーパーで二ユーロを割引してもらえなかった女性のために、娘を性器切除という古い因習から救い出すのに故郷に置いてくるしかなかった息子宛ての手紙を書きたいという女性のために、骨を折ってやり、そのつどソレーヌの意識は変わっていく。作中で紹介される、農民思想家ピエール・ラビが掲げるハチドリ運動のおとぎ話になぞらえ、「せめて自分にできることをする」と尽力するふたりの女性に胸を打たれる。

光文社 小説宝石
2020年8・9月合併号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加