<書評>『亜宗教 オカルト、スピリチュアル、疑似科学から陰謀論まで』中村圭志 著

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亜宗教 オカルト、スピリチュアル、疑似科学から陰謀論まで

『亜宗教 オカルト、スピリチュアル、疑似科学から陰謀論まで』

著者
中村 圭志 [著]
出版社
集英社インターナショナル
ジャンル
哲学・宗教・心理学/宗教
ISBN
9784797681215
発売日
2023/04/07
価格
1,056円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<書評>『亜宗教 オカルト、スピリチュアル、疑似科学から陰謀論まで』中村圭志 著

[レビュアー] 石堂藍(ファンタジー評論家)

◆奇妙な信念に囚われる人

 「亜宗教」とは著者の造語で、近現代に生まれた非科学的な信念体系のこと。取り上げられている話題は、十九世紀末の心霊主義ブーム、明治期の千里眼騒動、ファンダメンタリズム、UFO信仰とニューエイジなど。つまりは広義のオカルトの動向を考察するのが本書だ。

 オカルトという偏ったイメージのつきまとう言葉を避けて、敢(あ)えて造語にした意図にはいくつかあるだろうが、オカルト的なものに真面目に向き合ってもらいたいという思いが一つあるだろう。

 小さなコラムも駆使してさまざまな話題を繰り広げ、読み物として楽しいが、本書の主眼はオカルト的雑学を提供することではない。敢えて言えば啓蒙(けいもう)。人間は奇妙な信念を抱きやすいものであり、陥穽(かんせい)はどこにでもあるということを語っているのだ。信じやすい人に対しては、その虚妄を語り、冷静に批判するような人には、彼らもまた別の信念体系に囚(とら)われているということを気付かせる。総じてバランス感覚に優れた、手堅い近現代オカルティズム通覧の書である。

(インターナショナル新書 1056円)

1958年生まれ。宗教研究者、翻訳家。『宗教図像学入門』など。

◆もう1冊

『コンスピリチュアリティ入門』辻隆太朗ほか著(創元社)

中日新聞 東京新聞
2023年6月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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