『大規模言語モデルは新たな知能か』
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『大規模言語モデルは新たな知能か』岡野原大輔著（岩波科学ライブラリー）
［レビュアー］ 西成活裕（数理物理学者・東京大教授）
本書は、タイトルからは分かりにくいかもしれないが、いま何かと話題になっているＣｈａｔＧＰＴなどの生成ＡＩについての本である。適当な指示をするだけで自動的に長い文章を作ってくれるのは驚きで、人類にとってパンドラの箱を開けてしまったのではないか、と思えるほどだ。
この技術を数式抜きで理解したい人は、この本が最適だと思う。本書のようにどこが重要で何が凄（すご）いのかをパッと掴（つか）む事ができる解説は他にはなかなか見当たらない。特に自己注意機構というアイディアや、作ってみたら想像を超えた機能も実現してしまった、という驚きが書かれている箇所が面白い。そのしくみは人の脳とは同じでないが、ここまで凄ければもはや我々とは異なる知性と言えるだろう。そしてそれは逆に人の知性の理解にもつながる可能性がある、という著者の指摘は興味深い。
ただ気になるのは、日本はこの海外の技術の単なるユーザー国家になってしまうのか、ということだ。これに対して著者は抜本的に異なる技術を開発中だそうだ。この新しい挑戦を心から応援したい。
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2023年9月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです
