「孤独」を感じ不安になるのは“脳の勘違い” 池上彰が『メンタル脳』から導く不安への対処法

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メンタル脳

『メンタル脳』

著者
アンデシュ・ハンセン [著]/マッツ・ヴェンブラード [著]/久山葉子 [訳]
出版社
新潮社
ISBN
9784106110245
発売日
2024/01/17
価格
1,100円(税込)

脳は「昔のままの世界にいる」

[レビュアー] 池上彰(ジャーナリスト)


脳は私たちがまだ“サバンナ”にいると勘違い!?(※画像はイメージ)

 私たちが「孤独」を感じるとき、不安な気持ちになるのはなぜだろうか。現代社会はとても便利で、昔に比べれば独りで出来ることも格段に増えているはずなのに。

 この疑問に脳科学的な見地からこたえるのが、アンデシュ・ハンセン氏の新刊『メンタル脳』(マッツ・ヴェンブラード共著、久山葉子訳)だ。同氏は世界的なベストセラー『スマホ脳』の著者で精神科医でもある。新刊では、特に“史上最悪”ともいわれる若者のメンタルにフォーカスしながら、現代人の心の問題を解説している。

 この『メンタル脳』を読んだジャーナリストの池上彰氏が勧める、不安への対処法とは。以下、池上氏のレビューを紹介する。

■児童や生徒の不登校・自殺者数は過去最多

 昔に比べれば快適な暮らしができるようになったはずなのに、なぜ私たちは不安に苛まれ、メンタルを病んでしまったりするのだろう。とりわけコロナ禍以降に、精神状態が不安定になった人が増えたという。これは大人の世界ばかりでなく、子どもたちの世界でも同様だ。むしろより深刻かもしれない。

 文部科学省によると、2022年度の小中学校における不登校者数は29万9048人と、ほぼ30万人に達した。これは過去最多。さらに警察庁と厚生労働省の統計によると、2022年の小中高の児童生徒の自殺者数は514人と、こちらもまた過去最多を記録している。

 なぜ私たちは精神的に苦しむのか。もちろん原因は多様だろうが、その大きな理由は、私たちの脳が、「昔のままの世界にいる」からだという。脳の勘違いによって、私たちは不安になったりするというのだ。そう知ると、少し気持ちが楽になるのではないか。

 著者のアンデシュ・ハンセン氏はスウェーデンの精神科医。人間の進化の過程からすれば人間の精神はデジタルに対応できない。だからスマホから離れる必要がある。著者がこう説いた『スマホ脳』は世界的にベストセラーになった。

 となれば、出版社は著者に次作の執筆を要請することになる。こうして出版されたのが『ストレス脳』で、これを10代向けに書き直したのが本書だ。ティーンエージャー向けなので、易しく読めるが、「そうだったのか」と知る事実が満載だ。

新潮社 波
2024年2月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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