『案山子の村の殺人』
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『案山子の村の殺人』楠谷佑著
[レビュアー] 宮内悠介(作家)
「僕」こと宇月理久と篠倉真舟は、従兄弟(いとこ)同士で合作をするミステリ作家だ。その二人が、秩父の山奥にある宵待村を訪れるところから物語ははじまる。
宵待村の産業は、全国に出荷されるという案山子(かかし)。村のあちこちには、意匠を凝らした案山子が飾られている。だから、案山子の村というわけだ。
しかし、村では烏(からす)や案山子が毒矢で射られるという事件があった。そこについに、矢による殺人事件が起きてしまう。雪の積もった現場は、犯人の足跡の見当たらない、いわゆる「雪の密室」となっていた。
本作は東京創元社のレーベル「ミステリ・フロンティア」の二十周年記念作品で、「家政夫くんは名探偵!」シリーズで人気を博した楠谷佑の新作となる。特色は、爽やかな読み味でありながら、ほとんどストイックなまでに装飾を排して、直球の「犯人当て」に挑んでいるところだろう。
解決編の前には、二段階に分けられた「読者への挑戦状」が挿入される。冬の一日、ぜひ、いったんページをめくるのを止(や)め、推理を楽しんでみていただきたい。(東京創元社、1980円)