『血を繋げる。』
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<東北の本棚>勝つための心構え継承
[レビュアー] 河北新報
「プロサッカークラブには、それぞれ『人格』がある」と著者は言う。人格があやふやだと、クラブ独自の文化は創れない。チームは生きものなので血が通っている。組織に脈打つ血をしっかり繋(つな)げていくことが、「人格」形成の鍵を握ると説く。
著者はサッカーJ1鹿島アントラーズの常務取締役強化部長。20年以上にわたり、強化責任者を務めてきた。鹿島はJリーグ、天皇杯など主要3大会で通算19冠を重ねている。鹿島はなぜ勝負強いのか。その秘密を、当事者自らが明かしたのが本書だ。
鹿島の血の源流は、クラブの礎を築いたジーコにある。プロはこうあるべきだという思想を、フロント、指導陣、選手に植え付けた。クラブに関わる全ての人が勝利にこだわり結束する「ジーコ・スピリット」の継承によって、鹿島の文化は醸成されてきたという。血を繋げていくことが、強化責任者の最大の仕事だったと振り返る。
監督の指導方針にかかわらず戦い方の方向性を明確にすること、監督と選手の信頼関係が最も大切なこと、監督にも鹿島の文化を守ってもらうことなど、チームづくりをどう進めてきたかにも詳しく触れる。
鹿島がブラジル人を重用する理由についても解説。草創期からブラジル人の力を借りてきたため、多くのスタッフがポルトガル語を話し、ブラジル人の考え方、生活習慣を理解しているのだという。戦力は厚過ぎても薄過ぎてもいけないこと、人材を集めるための工夫なども述べる。組織マネジメント論としても興味深い。
著者は1957年生まれ、仙台市出身。鹿島の前身・住友金属工業の選手、監督を経て、鹿島のヘッドコーチなども務めた。
幻冬舎03(5411)6222=1404円。