『老後ぐらい好きにさせてよ』
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長い人生、いかに生きるか 老いを楽しむ知恵が満載
[レビュアー] 立川談四楼(落語家)
著者は談志の晩年の盟友であり、御歳(おんとし)85の今も元気だ。視力がやや弱いのはサングラスをかけていた昔からであり、談志の弟子はその達者なことに驚き、何か特別な(怪しい)健康法を実践しているのではないかと囁く。そこへこの本が出た。
怪しいところはありません。まっとうな本です。タイトルが示す通り、著者は世に貢献し、たくさんの仕事をしました。だから「老後ぐらい好きにさせてよ」となるわけです。「まえがき」で、すでに遺言状を書いたこと、葬儀は質素にすること、死ねば無になること等を述べ、あと数年生かしてくれと言います。
それからライフスタイルを開陳するわけですが、まっとうを装いつつ様々な工夫を凝らしています。“老後の居場所は退職前から、さがしておく”。これは大事なことです。昭和のサラリーマンは仕事一筋、気がつけば我が家は女房の牙城となり、居場所がありません。その場合と女房に先立たれた友人を例に、なるほどという展開になります。
“めし友を持たない老後はさびしい”は「老後のひとり飯はまずい」と始まります。つい自分がボソボソ食べる姿を想像してしまいますが、著者は雑談ランチを勧めます。過去に知り得た様々な業界の年下の友(女性あり)へ声をかけ、ランチを囲みます。三食のうちのランチのみなら付き合ってくれる人も多く、何と著者はほぼ毎日実行しているのです。
“年賀状はやめるが礼状は書く”。これも感心し、実行しようと思いました。つまり煩雑なことはしなくていいと言っているのです。しかし何か貰ったり世話になったら、礼状は書け。いい発想ですよね。ハガキ代で済むのですから。
長寿とは老後が長くなることだと言った人がいます。その老後をどう生きるかは我々の大きなテーマです。面倒なことを避け、よく歩き、飄々と、しかしちゃっかり生きる。そんなお手本発見の読書でした。