バッタ狂いによる抱腹絶倒の一冊
[レビュアー] 図書新聞
書店の新書売り場にひときわ異彩を放って目立つ新刊が並んだ。表紙に、緑色の衣を纏って、顔も緑色に塗り、触覚をつけた男が、虫捕り網を持って身構えている写真。思わず笑ってしまうような格好のはずなのに、そのやけに真剣な表情からはどこか厳粛な凄味すら発せられている。第4回いける本大賞を受賞し話題となった『孤独なバッタが群れるとき』の著者、前野ウルド浩太郎氏待望の新刊がこれだ。バッタに触りすぎてバッタアレルギーになってしまってもバッタを研究しつづけ、全身を緑色に身を包んでまでバッタの大群のなかに躍り出ていく。子供の頃からの夢「バッタに食べられたい」を叶えるために――。前著以上のおもしろさで、文字通り読みはじめたら止まらない抱腹絶倒の一冊。(5・20刊、三八〇頁・本体九二〇円・光文社新書)