『炭水化物が人類を滅ぼす【最終解答編】』
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<東北の本棚>炭水化物が人類を滅ぼす【最終解答編】
[レビュアー] 河北新報
著者は2013年に「炭水化物が人類を滅ぼす」を刊行し、「穀物栽培によって繁栄した人類が、穀物により滅亡への道をたどりつつある」と警鐘を鳴らした。糖質制限を自らの体で試し、効果や危険でないことを確認。その上で糖質の性質などを多角的に考察した力作だった。
同書は多くの読者の支持を得たものの、強い批判も浴びた。だが4年たち、糖質制限を取り巻く状況は大きく変わる。ダイエットの方法として広く認知され、健康への効果も見直された。食品業界や外食産業では「糖質制限市場」とも言える巨大マーケットが形成されている。
続編となる本書は、前作で未解決だった幾つかの問題点を解明。糖質制限の視点から人類史を見直すなど新たな試みにも挑んだ。「最終解答編」と銘打ったことに著者の自信がにじむ。
前著の「補完的復習」として、糖質制限とは「糖質により損なわれてきた健康不調から脱却し、本来の健康を取り戻すための健康法、食事法」であると定義。高血糖が全身の血管内皮を傷付け、肥満の原因となることを改めて示す。
前作での未解決問題では、インスリンの本来の機能は血糖を下げることではなく、タンパク質合成とそれに必要なエネルギー源(脂肪)を蓄積することだと指摘。肥満の原因はカロリーの過剰であり、カロリーを減らすために脂肪摂取を控えるべきだとの「常識」は誤りだと批判する。脂肪単独では肥満にならず、インスリンを分泌させる糖質との同時摂取が肥満を招くと強調。糖質が「肥満の唯一の原因」だと説く。
人類の歴史を振り返り、植物食が支えられる人口には限界があり、「穀物(糖質)からの独立宣言をすべきだ」と主張する。問題解決に向け、昆虫食を提案しているのも興味深い。
著者は男鹿市出身で東北大医学部卒。同大付属病院などを経て、現在は東京で外科クリニックを経営する。傷口を消毒せず、乾かさない「湿潤治療」のパイオニアとしても知られる。
光文社03(5395)8116=907円。