『コミュニティ・アーカイブをつくろう!』
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<東北の本棚>市民主体で震災を記録
[レビュアー] 河北新報
一般の市民が自分や周囲の人たちについて多様なメディアを使って記録し、発信する。仙台市青葉区のせんだいメディアテークは東日本大震災の後、こうしたアーカイブ活動の拠点となった。研究者やスタッフが活動の経緯や課題をまとめた。
拠点の名称は「3がつ11にちをわすれないためにセンター」。館内に編集スタジオや動画配信コーナーを設け、映像、写真、音声を記録として残したい市民に開放した。震災で予算が凍結されたため、人件費を除けばほとんど予算ゼロのスタートだった。
参加者は10~80代の約180人。社会人、学生、プロの映像作家などが含まれる。2人の女性が石巻市などに通って被災者との会話を収録した「あいだのことば」、被災地で流れる時間をロングショットで映す「沿岸部の風景」など多様な記録が生み出され、各地で上映会が開かれた。
発信する際の社会的責任が課題となった。例えば地滑り被害があった住宅地で造成業者を非難する意見をそのまま発信していいのかどうか。参加者は考え悩みながら先に進んだ。
メディアテークは参加者が交流する「サロン・ド・わすれンヌ」、映像技術を学ぶ「きろくぶ!」、上映会「星空と路(みち)」などを催してきた。市民に活躍の舞台を提供する施設の理念に基づき、全体が体系化されてきたことが分かる。
著者の佐藤さんは京都市立芸術大准教授、甲斐さんはメディアテークのアーティスティックディレクター、北野さんは仙台市市民文化事業団主事。
晶文社03(3518)4940=1998円。