[本の森 ホラー・ミステリ]『予言の島』澤村伊智/『不老虫』石持浅海

レビュー

4
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予言の島

『予言の島』

著者
澤村伊智 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041067697
発売日
2019/03/15
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

不老虫

『不老虫』

著者
石持浅海 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334912741
発売日
2019/04/18
価格
1,836円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

[本の森 ホラー・ミステリ]『予言の島』澤村伊智/『不老虫』石持浅海

[レビュアー] 村上貴史(書評家)

 デビュー作『ぼぎわんが、来る』以来、ホラー作家として人気を博してきた澤村伊智が、初めて本格ミステリに挑んだ『予言の島』(KADOKAWA)。横溝正史の『獄門島』を意識したという。

 職場でのパワハラで心を病んだ幼なじみを励まそうと、天宮淳は、もう一人の幼なじみの手配により、小旅行に出ることにした。二十年前に死んだ霊能者の予言が当たるのかどうか、現地で確認しようというのだ。いささか不謹慎な動機で瀬戸内海の寂れた孤島に赴いた幼なじみ三人組は、“二十年後にこの島で一夜のうちに六人が死ぬ”という趣旨の予言が的中していく様を体験することになる。しかも一人目の死者は、三人のなかの一人だった……。

 怨霊、呪い、予言。これらに支配されたような島という舞台と、その島民や島に縁のある登場人物たちを最大限に活用して作られたミステリだ。心霊写真といった(ある世代には)懐かしいガジェットを駆使したり、あるいは迫り来る怨霊が引き起こすパニック劇を盛り込んだり、様々な技巧を駆使して著者は読者を結末まで導き、そこでミステリとして物語を驚きとともに着地させる。その手つきは実に鮮やかだ。ミステリ作家・澤村伊智の誕生を喜びたい。

 ちなみに閉鎖的な環境と予言を題材にした本格ミステリとしては、『屍人荘の殺人』が話題となった今村昌弘の『魔眼の匣の殺人』が本書と相前後して刊行されている。そちらとの読み比べもお勧めしたい。

 登場人物たちの徹底したディスカッションを通じて真相に到達するスタイルの本格ミステリの書き手として知られているのが、石持浅海だ。デビュー作『アイルランドの薔薇』しかり『扉は閉ざされたまま』しかり。だが石持浅海は、時々そこから逸脱する。端正で緻密な謎解きではなく、言葉は悪いが、ゲテモノに走るのだ。『相互確証破壊』とか。今回紹介する『不老虫』(光文社)もゲテモノ寄りだ。

 人類の脅威になるという寄生虫サトゥルヌス・リーチ(別名不老虫)が密かに日本に運ばれてくるという密告があった。農林水産省で防疫に従事する恭平と、米国から呼び寄せられた専門家(猫を連れた若き美女だ)が、その対策に奔走する……。

 不老虫が妊娠中の女性の子宮に宿るという設定はなかなかに良識を逸脱しているし、不老虫を退治するシーンもそこそこグロい。それはそれである種の魅力なのだが、それだけの小説ではない。密輸側と対策側の攻防という大きな枠組みがあり、ここで知恵比べが繰り広げられるのだ。相手の正体を探り、相手の次の一手を読む様は、石持浅海らしく理詰め。二種の味を本書は備えているのだ。正直、読者を選ぶ小説だが、この世界観に馴染めれば、ラストの一行まで愉しませてくれる。

新潮社 小説新潮
2019年6月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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