<東北の本棚>勝手に最高の答え導く

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<東北の本棚>勝手に最高の答え導く

[レビュアー] 河北新報

 「新しい曲の萌芽(ほうが)は、いつも何か他のことをしているときに突然やって来る」(チャイコフスキー)「また翌日書き始めるまで、書いていることについて考えない。そうすることで、私の潜在意識が考えてくれている」(ヘミングウェイ)。本書は、天才たちが残したこれらの言葉の意味を説き明かしてくれる一冊だ。
 仙台市在住で、脳科学などを研究する京都芸術大客員教授の著者は、人間には(1)即決をする「直観」(第一の思考)(2)じっくり考えて決める「論理」(第二の思考)-のほかに、(3)自分で意識できない思考、無意識思考(第三の思考)があると主張する。複雑な意思決定や創造性を発揮する際は(1)や(2)より(3)が優れているとし、偉人たちの創作にも応用されたとみる。
 現代人も同様で、「新企画の構想を練るために何時間もかけて情報を集め、検討したのに、いい案が浮かばない。いったん家に帰り、風呂に漬かってゆっくりしていたら、不意に名案が思い浮かんだ」という場合が当たる。即決できず、熟考しても駄目で、決定を先延ばしにしていると、ひらめく。他のことをしていても脳が無意識に考えているからで、意識的に考えている時よりも脳が膨大な情報を処理し、偏りがなく正確で、創造的な結論を導くという。
 主張は各研究機関によって実証されている。同じテーマの八つの動画のうち、うそを伝える動画がどれかを選ぶ実験では、直観や論理で選択した人よりも、動画視聴後に別の課題を与えられた人の方が正確に判断したことを挙げる。
 著者はその上で、「無意識思考のトリセツ」を披露。ある決定をする際、好奇心を持って関連情報を集めたら、好きな音楽を聴くなどして放っておく。そうすれば無意識思考が勝手に最高の答えを与えてくれるとして、「無意識思考こそが最強の思考法だ」と説く。(桜)

 あさ出版03(3983)3225=1650円。

河北新報
2020年8月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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