『大事なときに緊張しないですむ方法』
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大事なときに緊張しない体をつくるために見直したい生活習慣は?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『大事なときに緊張しないですむ方法』(松本桂樹 著、だいわ文庫)の著者は臨床心理士ですが、現在はカウンセラーとして、おもに企業で働く人たちの精神的な悩みやトラブルの相談に応じる仕事(EAP:従業員支援プログラム)をしているのだそうです。
相談を受けるなかで、「すぐに緊張してしまう」「大事な場面でいつも緊張して失敗する」というような声をよく耳にするのだとか。
また、そういう人は多くの場合、「弱い自分がイヤでたまらない」「小心者の性格をなんとかしたい」とも口にするのだといいます。
しかし本来、人間は誰しも緊張するもの。だいいち緊張してしまったからといって、すべてがおしまいになるわけでもありません。ましてや緊張しやすいからといって、弱い人、小心者であるとは限りません。
それに実際のところ、緊張を和らげる方法は存在しますし、それどころか緊張したままで切り抜ける方法だってたくさんあるもの。そこで本書では、緊張しやすい人でも、つらい思いをせずに仕事をし、生活できるような考え方や対処法を紹介しているわけです。
そんな本書のなかから、きょうは第5章「『緊張しない自分』を習慣にしよう」のなかから、「日常生活でできる緊張しにくいカラダづくり」に焦点を当ててみたいと思います。
意外にも、ちょっとした習慣が緊張を和らげてくれるというのです。
大事な場面の前夜に準備すること
大事な場面で緊張しないためには、もちろん準備やリハーサルをしておくことが大切ではあります。しかし著者によれば、それよりももっと大きいのは「体調を整えておく」ことなのだそうです。
「緊張」という現象には、「カラダに起こる反応、変化」という特徴がありますので、そのときのカラダのコンディションの良し悪しが、緊張の起こりやすさを大きく左右することが多いのです。(167ページより)
体調を整えるためにいちばん役立つのは、もちろん前の晩にぐっすりとよく眠ること。
栄養と消化のいい夕食を早めにとって体をくつろがせ、質のよい睡眠を心がけることが大切だということです。そこで準備についてはほどほどのところで区切りをつけ、ぐっすり寝てしまおうと著者は提案しています。
ちなみに夕食時のお酒はリラックスするための助けになりますが、寝る直前にお酒をたくさん飲むことはお勧めできないといいます。
酔った勢いで眠ってしまうと、胃腸や肝臓は働き続けることになるため、あまりよい睡眠とはいえないというのです。そればかりか、かえって早く目がさめてしまうこともあるのだといいます。(166ページより)
よい睡眠は心にも効き目がある
うまく眠れないという人は、日頃から、起きる時間と寝る時間を、だいたいでいいので固定することです。
よく「昨夜はたっぷり一〇時間眠れた」「三時間しか寝られなかった」と睡眠時間の長さを気にする人がいますが、それよりも、起床と就寝の時間帯を決めてパターン化し、習慣づけていくことのほうがもっと大事です。(168ページより)
夜は毎日だいたい同じくらいの時間にベッドに入るようにし、朝は少し眠たかったとしても、たとえば6時など、決まった時刻に起きてベッドから出るーー。
そうやって体の習慣にしてしまえば、だんだん眠りも安定してくるというわけです。 (168ページより)
胃腸を落ち着けると気持ちが安定する
また、睡眠と並んで重要なのが食事の工夫。具体的にいえば食事について、「自分なりにあまり緊張しない場面やパターンを書き出してみる」ことが有効だというのです。
そこで著者が勧めているのは、大事なことはがある前日の、とくに夕食について振り返って工夫してみること。
何が「良いパターン」になるかは、人によってそれぞれです。 寝る二時間前からコーヒーや紅茶を飲むのを控えたら、前より眠れるようになったという話は、よく聞きます。
一方で、寝る前にハーブティーを一杯飲むといいという人もいます。 夜中によくトイレに起きるので、寝る前の水分を控えたらいい具合になったということもあります。
ほかにも、 「もともと脂っこい食べ物が苦手なので、会議前日の夕食は油を控えめにしてみたら、調子がいいようだ」 「夕食時のビールをやめてみたら、下痢をしなくなった」 「食後にソファで、お腹に掛け物をして冷やさないようにしながらゆっくり休むことにしたら、翌日も気分よく過ごせるようになった」
何でも自分にとって良い結果が出れば、それがあなたにとっての「良い方法」です。(171〜172ページより)
一般的には、コーヒーや紅茶、日本茶、お酒やハーブ類も人体に対する刺激物。しかし適量を上手にとれば、ストレス解消やリラックス効果につながる面もあると著者は主張しています。
「向き不向き」や「加減」は、人によって大きく違うもの。食事の工夫をしようといっても、「あれもダメ、これもダメ」では、かえってストレスがたまってしまうことも。
つまり、自分にとっての「うまくいく方法」「「いい結果につながる食事法」を見つけ、それを繰り返し続けていくことが大切だという考え方です。(170ページより)
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具体的にわかりやすく紹介されているメソッドは、どれも実践的なものばかり。すぐに活用できるので、役に立つヒントやアイデアがきっと見つかるはず。
つい緊張してしまうという悩みをお持ちなら、ぜひとも活用したい一冊です。
Source: だいわ文庫
Photo: 印南敦史