『金魚酒』深堀隆介著
[レビュアー] 産経新聞社
金魚を描く美術作家の作品集だ。枡(ます)の中に金魚が入った代表作「金魚酒」シリーズの20周年を記念し、20年分の作品を集めた。
ぷっくりした体に、ふわりと広がる尾びれ。透き通るようなうろこ。日本人は枡が酒器だと知っているので、枡の中は日本酒だと思い込む。当初は本物だと思い込んで怒る人もいたという。
立体的で写真のようにリアルな金魚だが、実は作家の脳内にいる「空想の金魚たち」。透明樹脂にアクリル絵の具で描く独自の技法で知られ、本書では技法の解説や初期作品と現在との比較も行っている。金魚をめでる心をくすぐる一冊。(芸術新聞社・通常版2750円)