『どんな怒りも6秒でなくなる』
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怒りっぽい人から身を守るための4つの方法
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『どんな怒りも6秒でなくなる アンガーマネジメント・超入門』(安藤俊介 著、リベラル社)の著者は、日本アンガーマネジメント協会代表理事。
ライフハッカーでも過去にインタビューが掲載されており、著作もご紹介したので、覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
テレビを見ても、ネットを見ても、常に誰かが誰かに対して怒っています。
世の中の人って、こんなに怒りっぽかったでしょうか。
県外ナンバーの車を見れば「県外ナンバーは来るな」と貼り紙をし、マスクをしていない人を見れば注意する。自粛警察、マスク警察といった言葉も生まれました。
世の中が穏やかであったら、そんなことを取り締まる人は不要なはずです。
それもこれも、2020年春先から本格化したコロナ禍の影響を強く受けています。コロナ禍によって多くの人の生活が一変しました。「はじめに」より)
人は先が見えないと不安を感じ、しかもその不安は怒りの炎を燃え上がらせるエネルギーになるもの。普段であればたいして気にならないことも気になり、許せなくなってしまうのです。
しかし、ウィズコロナ、アフターコロナの時代だからこそ、こころ穏やかに毎日を過ごしたいところ。そこで本書では、誰にでも簡単にできる「怒りに悩まされない方法」を紹介しているわけです。
ところで、自分が怒らないように気をつけていたとしても、他者の怒りのターゲットになってしまうこともあるもの。そこできょうは第6章「怒りっぽい人から身を守る方法」に焦点を当ててみたいと思います。
対処法1:相手を理解する
人の怒りに対処するため、まず必要なのは、相手を観察すること。
相手がどんな性格で、いつ、どこで、どのように怒るのかがわかれば、対処法も見えてきます。
なお相手を観察する際には、次のポイントに注目してみるといいそうです。
時間や状況
特定の時間に怒りやすい(朝は機嫌が悪い、夕方にはイライラしがち、など)イライラしやすい体調や状況があるかを観察してみる必要が。
場所
「人ごみが嫌い」「片づいていない部屋はいや」など、不快に感じる場所は人それぞれ。そこで、その人が怒りやすい場所があれば、記憶にとどめておくべき。
行動
細かい作業をしているときや、運転中に怒りっぽくなる人もいます。行動と怒りになんらかの関連やパターンないかを見てみることも大切。
表情や仕草
眉間にシワが寄る、貧乏ゆすりをする、ため息をつく、歩くのが速くなるなど、イライラした気持ちを表す表情や仕草、クセがないかをチェック。
ことば
「なんでわからないんだ!」ということばを使って怒る人は、「自分の言い分が理解されないと怒りやすい」と考えられます。
その人が怒る際に繰り返し使うことばがあればメモし、なにに対して怒ることが多いかを考えるといいそうです。
繰り返し観察していると、相手の怒りのパターンが見えてくるもの。そのような状況のときにはあまり近づかないようにすれば、余計な怒りをぶつけられることから自分を守れるわけです。(162ページより)
対処法2: 適切な距離、つきあい方を考える
漠然と「怒りっぽい」と思う人でも、実際にそう感じるのは特定のシーンに限られるというケースは少なくありません。つまり、それがわかるのであれば、なんらかの対処をすればいいということになるはず。
たとえば直接会っているときによく怒られるのなら、メールや電話などでのコミュニケーションを増やすのもひとつの手段。対面だと、余計なことまで伝わってしまうこともあるからです。
人とのコミュニケーションにおいて大切なのは、必要なことをきちんと伝えられること。それさえできれば、手段はなんでもいいわけです。(168ページより)
対処法3:相手の怒りを引き出さないようにする
相手の怒りに触れない、適度に距離を置くことも効果的ではありますが、そもそも相手の怒りを引き出さないことも重要。
もし自分にだけやたらと怒ってくる人がいるなら、こちらの特定の行動や言動が、その人の怒りを引き出すきっかけになっているのかも。
例えば、あなたの上司が「要点を先に言え」というのが口グセだとします。
それに対しあなたが、要点よりもそれまでの経緯や背景を説明した方がわかりやすいと考え、実践していたらどうでしょうか。
あなたが要点を言わずに話し続けることに上司はイライラし、そのうち爆発してしまうかもしれません。(170ページより)
価値観の違いから生じることですが、相手を怒らせるつもりはまったくなくても、その人の怒りに火をつけてしまうことはあるのです。そういった場合は、相手の価値観に合わせて要点を先に言うようにすればOK。
相手がどういうことばや話題に引っかかるかを観察し、それを避けるようにするのも、怒りを防ぐのに効果的だということです。(170ページより)
対処法4:相手の怒りにのまれないようにする
相手の怒りにのまれてしまうと、萎縮したり、落ち込んだりと、心に余分なダメージを受けてしまうもの。そうならないためには、自分を守る方法を身につけることも大切。
まず、怒られたらお腹に力を入れて、その場にふんばるようにします。
怒られていると胃が痛くなることがありますが、これは怒られることで気持ちだけでなく、体まで負けてしまっている状態なのです。
なので、怒られているということに体が負けないよう、お腹に力を入れます。
そして、自分の前に頑丈な壁があると想像しましょう。怒っている人は火を噴いていますが、あなたがつくった壁にはね返されているとイメージするのです。
これらができると、相手の怒りに無防備にさらされていた時よりも落ち着いてその場にいられるようになります。(172〜173ページより)
また、相手が2つのことを言っていないかどうか確認することも大切。人は怒るとき、事実と思い込みをごちゃ混ぜにしていることもあるからです。
たとえば上司の怒りに事実と思い込みの2つが混ざっていたとしたら、事実(自分のミス)については素直に火を認めるべきですが、上司の思い込みかもしれないことにまで反応して、自分を責める必要はないということがわかります。
そのように事実と思い込みを分けて聞けるようになれば、相手の怒りにのまれてしまうことがなくなるわけです。(172ページより)
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このほか、「怒りの解決方法」「怒りに振り回されないコツ」「上手な怒り方」など、怒りに関するさまざまなメソッドを網羅した一冊。
利用価値が大きいので、コロナ禍でのトラブルを避けるためにも参考にしたいところです。
Photo: 印南敦史