『金沢 古民家カフェ日和』
- 著者
- 川口 葉子 [著]
- 出版社
- 株式会社 世界文化社
- ジャンル
- 歴史・地理/旅行
- ISBN
- 9784418222117
- 発売日
- 2022/08/02
- 価格
- 1,650円(税込)
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【聞きたい。】川口葉子さん 『金沢 古民家カフェ日和』
[レビュアー] 黒沢綾子
■建物と店主 時を紡ぐ物語
「カフェは『人』。オーナーの美意識とおもてなしの気持ちを感じる店には何度も行きたくなりますね」
全国2000軒以上を訪れてきたカフェ・喫茶店案内の第一人者。本書は、築50年以上の建物を転用・再生した「古民家カフェ」を紹介するシリーズ第3弾だ。前作の「京都」版は地元の書店員が選ぶ賞に輝くなど、高い評価を得た。
今回の舞台は、情趣ある茶屋街でおなじみの観光都市、金沢。「(国の)重要伝統的建造物群保存地区に2つも茶屋街が選定されているのは金沢だけ。多くの茶屋建築がカフェに改装されているのも金沢ならではです」
器など細部にも金沢らしさが。「加賀百万石が育てた工芸王国として、輪島塗や九谷焼をはじめ、地元の工芸品が意識して使われていますね」。最高の美を求めつつ、幕府の警戒を避けて目立つことを控えてきた、武家文化のプライドと屈折が、金沢独特の艶(つや)を生んだのではと見る。
お茶屋のみならず、診療所に髪結い美容室、洋品店、バナナ保管庫まで、建物の〝出自〟はさまざま。古民家カフェは、建物の歴史と店主の人生が交わる物語でもある。
「細部に向ける目はとても大切。この改装はないなという残念な古民家カフェもありますよね。例えば古い建具を生かさず、サッシの窓に変えていたり…。時を経たものを愛し、不便さも含めて古民家ぐらしを愛するオーナーは、素敵(すてき)だなと思います」
魅力的なカフェと出合うには、「情報を集め過ぎない」が秘訣(ひけつ)という。
「SNS(交流サイト)や雑誌から、嫌でもカフェ情報は入ってくる。情報過多になると、偶然の出合いや、自分で発見する楽しみが減ってしまう」
本書にこんな一節があった。「間違えて乗ったバスは、往々にして私を素敵なカフェに配達してくれる」(世界文化社・1650円)
黒沢綾子
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【プロフィル】川口葉子(かわぐち・ようこ) ライター、喫茶写真家。茨城県生まれ。子供の頃、インドで3年間過ごす。早稲田大卒。『喫茶人かく語りき』『京都カフェ散歩』など著書多数。