国谷裕子の「クロ現」打ち切りに“ガックリ”

レビュー

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キャスターという仕事

『キャスターという仕事』

著者
国谷 裕子 [著]
出版社
岩波書店
ISBN
9784004316367
価格
907円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「国谷クロ現」が消えたのは――

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

「ニュースステーション」の久米宏は手軽な踏み絵でした。彼を毛嫌いするタイプとは酒を呑まない。そう決めると、不毛な議論の果ての宿酔いが減ってねぇ。

 で、彼ほど便利なニュースキャスターはしばらく不在で不便だった末、久米なき里の掃き溜めに鶴が「クローズアップ現代」の国谷裕子。

 縦書き国文科系の阿川佐和子と同様、横書き英文科系の国谷も長らく嫌われない才女で、久米のように使える物差しではなかったのに、ここ1、2年で「クロ現」批判、国谷批判が突沸。彼女を貶し出した皆様がアンチ久米派と綺麗に重なる。

 国谷クロ現が急に打ち切られた原因は、安保法制について大官房長官に「しかし」連発で喰い下がった生インタビューだったとか。が、国谷自身が『キャスターという仕事』で触れてるようにあの番組、そもそも前年の特定秘密保護法は一度も取り上げていなかったという体たらく。NHK名物のグズとズルは健在で、番組やキャスターを守る気なんて菅激怒云々の前から失せてたわけです。

 この新書、日本語に自信が持てない帰国子女が挫折も経験しつつTVジャーナリズムの達人に化けていく成長の物語として読めば、得るモノは多い。ところが、その達人の仕事の場が消えるまでの記録として読むと、失ったモノの大きさを痛感してガックリ。「クロ現」の国谷の眼耳口は、ニュースの現場にまで伸びるワタシやアナタの眼耳口だったんですから。

新潮社 週刊新潮
2017年2月23日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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