『キャスターという仕事』
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テレビの中で言葉の力を信じ、問いかける
[レビュアー] 図書新聞
二三年間にわたり、NHKの「クローズアップ現代」のキャスターを務めた著者によるドキュメント。「言葉の持つ力」を信じることがすべての始まりであり、結論だったと著者はいう。テレビの特性とは対極の、その力を大事にする。それは映像の一面性を検証し、映っていない部分への想像力を言葉によって喚起する姿勢だった。感情に訴えかけ、一体化を促すテレビの危うさと、人びとの「風向きの法則」(井上ひさし)に流される危うさのはざまで言葉を視聴者に届けながら、著者は番組をとおして、現在の日本社会は言葉での伝達が難しくなってきたという実感をおぼえた。それでも言葉に誠実であり続けようとする著者は、「言葉による問いかけ」をキャスターという仕事の核として実践したことがわかる。(1・20刊、二五六頁・本体八四〇円・岩波新書)