橋本治がおくる“説教” 「たとえ世界が終わっても」

レビュー

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たとえ世界が終わっても その先の日本を生きる君たちへ

『たとえ世界が終わっても その先の日本を生きる君たちへ』

著者
橋本 治 [著]
出版社
集英社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784087208702
発売日
2017/02/17
価格
821円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

説教させたら日本一!の力強さ

[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)

 10年以上前のことだが、ある書評で橋本治を「いま中高生に説教させたら日本一の著者」と紹介した。その意見はいまでも変わらないが、対象は中高生に限らない。『たとえ世界が終わっても』は、「世界があやうい方向に舵を切っているのでは」と思わせる近年の出来事を受けた語り下ろし。大量生産・大量消費とともに育った51歳と、バブル時代の空気を想像できない32歳という二人の聞き手に対し、力強い言葉で世代間の認識ギャップをぐいぐい埋めていく。説教といっても自分勝手な語りではない。言葉をねじこみ、届かせる技術を鑑賞したい。

 この手の本をわたしが好んで読むのは、若い世代に話が通じないと嘆くのは大人の怠慢だと思うから。相手の視角からものを見て、「話が通じる回路」を探しつづければ、必ず見つかる。自分が生まれる前の社会の雰囲気なんて知らなくて当たり前。若者のせいにしてはいけない。

 その点、この本はじつに痛快だ。イギリスのEU離脱の裏に、一つにまとまりたい願望はあるヨーロッパだが、強い力でまとめられるとじきに崩壊する歴史を透かし見る。アメリカ大統領選の話題では、もはや輸出で儲ければアメリカが立ち直れる時代ではないと、世界経済の構図をおさらいする。視野が広く、視点が高い。日本のバブル時代は、貧乏が消えたというより金持ちがいなくなった時代だというように、新鮮な読み解きにも満ちている。あっという間に読み切った。

新潮社 週刊新潮
2017年4月13日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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