<東北の本棚>名作の誕生秘話を紹介
[レビュアー] 河北新報
映画好きが高じた著者は、東宝スタジオに近い東京都世田谷区の成城大に進学し、卒業後は学校法人成城学園に就職した。大学在学中に映画「青春の蹉跌(さてつ)」のロケを見掛けたことを機に、映画製作と成城という土地のつながりについて調べ始めた。映画をこよなく愛する著者の情熱と知識が結実した一冊だ。
成城は数々の名作のロケ地で、世界的な映画監督黒沢明さんや俳優三船敏郎さんら多くの著名な映画関係者が居を構えた場所でもある。著者は「日本のハリウッドかつビバリーヒルズ」と位置付ける。
本書は3部構成。約50作品を取り上げ、貴重なスチル写真と共に映画製作の秘話や著者の思い出などをつづっている。
高度経済成長期の気分を軽妙な演技で体現したコメディアンで俳優の植木等さんが主演を務めた映画「無責任」シリーズを、著者は思い入れの強い映画として取り上げている。
著者は「ニッポン無責任野郎」をビデオで鑑賞していた際、植木さんが主題歌を歌い出す場面が成城学園北口駅前の路上であることを知り、「成城ロケ映画」探しに夢中になっていった。巻末には「成城ロケ映画」の129作を紹介する一覧表を収めている。
成城大の浅沼圭司名誉教授は「『地域映画論』ないし『地域映画史』ともいうべき、あたらしい研究領域の可能性を、この書物は告げているのではないだろうか」と推薦文に記している。
著者は1955年山形市生まれ、東京都世田谷区在住。成城大学生部次長などを務めた。
白桃書房03(3836)4781=2970。