<東北の本棚>読書に支えられた人生

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<東北の本棚>読書に支えられた人生

[レビュアー] 河北新報

 元東北福祉大准教授(図書館学)のエッセー集。図書館司書の実績や豊富な読書量、人生経験を踏まえ、影響を受けた本や言葉、旅、音楽などに関する52編を収録している。人生の岐路に立った時、文学に支えられたことなどを気取りのない筆致で伝えている。
 1章では谷川俊太郎の詩集や「赤毛のアン」「風と共に去りぬ」「くまのパディントン」など16冊を取り上げ、心に残る文章を紹介。自らの人生の出来事と絡め、言葉の力に言及している。
 中でも「風と共に去りぬ」は、衝撃的な読書体験となった一冊と位置付けている。その上で「みんな、明日、タラで考えることにしよう。そしたら、なんとか耐えられるだろう。明日、あの人を取りもどす方法を考えることにしよう。明日はまた明日の陽が照るのだ」のくだりを紹介している。
 この文章によって、つらい時を過ごしていた著者は心を鼓舞され、自立した女性として生きていく勇気を与えられたことなどをつづっている。
 3章は著者が薦める16冊に関する書評。ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロさんの「忘れられた巨人」や仙台市出身の恩田陸さんの直木賞受賞作「蜜蜂と遠雷」などを紹介している。「蜜蜂と遠雷」については「稀(まれ)にみる臨場感あふれる、そしてスリリングな小説だった」と評している。
 著者は1948年大崎市生まれで同市在住。山形大人文学部(現人文社会科学部)卒。東北福祉大図書館司書を経て同大准教授に就任。退職後は文筆活動に励んでいる。
 郵研社03(3584)0878=1620円。

河北新報
2018年4月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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