「生きたい」素朴な本能が伝わるガーナのリベリア人難民キャンプ密着ルポ

レビュー

6
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アフリカの難民キャンプで暮らす

『アフリカの難民キャンプで暮らす』

著者
小俣直彦 [著]
出版社
こぶな書店
ISBN
9784991084201
発売日
2019/06/15

書籍情報:版元ドットコム

“生きたい”素朴な本能が伝わる ガーナの難民キャンプ密着ルポ

[レビュアー] 大竹昭子(作家)

 出来たばかりの難民キャンプはメディアに紹介されるが、本書が取り上げるのは著者が訪れた二〇〇八年時点ですでに十八年間も続いていたガーナにあるリベリア人の難民キャンプだ。実際に見たならば、これが難民キャンプ? と面食らうような、地元の村と見分けのつかない集落に、二万人が暮らしていた。

 著者は博士論文のために難民の男性ふたりと十三カ月共同生活をし、人々の暮らしを調査した。論文を提出後も、そこでは書けなかったことを気にしつづけ、隣人としての彼らの姿を記すため筆を執った。

 労働許可がもらえず、銀行口座が開けず(故に借入れが出来ない)、自ら選んだ代表者も持てない、そんな宙づり状態が長期化したとき、人はどのように暮らしていくのか。

 キャンプ内には様々な商いがある。最下層の仕事は飲料水や果物売り、水用のプラスチックパックの回収業。富裕層はインターネットカフェや携帯電話店などを経営する。起業の元手はアメリカにいる縁者などからの送金だ。そうしたつながりのあるなしが命運を分けるから、縁者のいない人はSNSを使って先進国に友人を作ろうとする。ワラにもすがる思いなわけで、そのためのコンサルタント業すらある。

 つまり、一口に難民と言ってもその状態は一様ではない。母国で有利な立場にいた人はここでも恵まれ、持たざる人は同じように貧困化する。しかも長期化により国際社会は無関心、というため息が出るような状況。それでも、私たちの社会になくて、この社会にあるものに励まされる。それは自らの死を身近に感じた者が持つ「『生きたい』という素朴な本能」だ。

 殺されそうになりながら、生きるためにキャンプまで逃げてきた人々の生命力に感服し、それを個人の声として届けたところが本書の尊さだ。彼らに出会えた確かな手応えがあり、個の声が聞けて初めて「難民」への想像力が働くことを痛感した。

新潮社 週刊新潮
2019年9月5日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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