<東北の本棚>独自のアジア主義提唱

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東洋日の出新聞 鈴木天眼

『東洋日の出新聞 鈴木天眼』

著者
高橋信雄 [著]
出版社
長崎新聞社
ISBN
9784866500102
発売日
2019/10/17
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>独自のアジア主義提唱

[レビュアー] 河北新報

 明治時代から大正時代にかけ、立憲・平和主義に立脚し、国家主義や軍国主義に対し批判の論陣を張った硬骨の新聞人鈴木天眼(1867~1926年)。二本松藩士の家に生まれ、長崎で「東洋日の出新聞」を創刊し、主筆として健筆を振るった。本書は23年にわたる全論説を読み解き、その思想の軌跡をたどった労作だ。
 若き日、アジア主義者の頭山満らと交流があり、国家主義団体の書籍にも紹介された。そのため天眼には対外強硬の志士といったイメージが今も付きまとう。だが、活動の場を東京から長崎に移した後の言説を追うとそれが誤解であり、進歩的な思想を持ったリベラリストだったことが分かる。
 天眼は、政府に迎合し対外強硬論で世論をあおる多くの新聞と一線を画した。第1次世界大戦参戦や対華二十一カ条要求、シベリア出兵などことあるごとに警鐘を鳴らし続けた。天眼が特に問題視したのは、天皇の神格化とその権威を利用した藩閥政治による軍国化と言論封殺だ。旧満州(中国東北部)や朝鮮半島など隣国への侵略行為を猛然と指弾し、対等な友好・協力関係による独自のアジア主義を唱えた。
 明治、大正に長崎の地で、戦後民主主義を先取りしたような主張を展開していたことは驚きに値する。長崎では長く新聞販売部数1位を守ってきたという。反骨精神にあふれた言論活動を継続できたのも、多くの読者の支持があればこそだった。
 本書では会津藩最後の家老西郷頼母の養子で、小説「姿三四郎」のモデルとなった伝説の柔道家西郷四郎も詳述。天眼の右腕となり記者として活躍したという記述は興味深い。
 著者は長崎新聞社の元論説委員長。日本、世界の政治状況など今日の社会情勢を鑑み「天眼の論説には時代を超えて生きる教訓が含まれている」と訴えている。
 長崎新聞社095(844)5469=1980円。

河北新報
2020年5月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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