ビジネスパーソンの「心の危機」に備える、睡眠力アップ術

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「会社がしんどい」をなくす本 いやなストレスに負けず心地よく働く処方箋

『「会社がしんどい」をなくす本 いやなストレスに負けず心地よく働く処方箋』

著者
奥田弘美 [著]
出版社
日経BP
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784296109500
発売日
2021/06/04
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

ビジネスパーソンの「心の危機」に備える、睡眠力アップ術

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

私は精神科が専門の医師ですが、約10年前から「産業医」を中心に仕事をしております。

現在、約20社の会社の産業医を担当し、多数のビジネスパーソンの心身の健康をサポートしています。その中でコロナ禍を経て、働く人のストレスが減ることなく、どんどん高まっている状況をひしひしと感じています。(「はじめに」より)

「会社がしんどい」をなくす本』(奥田弘美 著、日経BP)の著者は、ビジネスパーソンを取り巻く精神的な状況についてこのように明かしています。

産業医として担当している会社の社員と面談をすると、

「リモートワークの影響で体は楽になったけれど、同僚や上司とうまくコミュニケーションがとれなくなった」

「相談相手がいないため、問題を抱え込むことが増えた」

「人と合わなくなって孤独感が強くなった」

などと打ち明ける人が少なくないというのです。

だとすれば重要なのは、「いまは元気だったとしても、これから自分にも『心の危機』が訪れるかもしれない」と覚悟し、あらかじめストレスを迎え撃つための準備をしておくことであるはず。

そこで本書では、産業医としての業務のなかで出会ってきたさまざまな事例を紹介しながら、ストレスに負けず、会社で元気に働き続けるための「考え方のコツ」や「心身のケア法」を伝えているわけです。

そんな本書のなかから、きょうは「睡眠」に焦点を当てた第III部「カラダとココロがラクになる!」内の10章「睡眠 ストレスが続いたら睡眠を最優先に!」に注目してみたいと思います。

中心になっているのは、良質な睡眠をとるためには、寝る前の時間にリラックスして心身の緊張を解いておく必要があるという考え方です。

寝る1〜2時間前はスマートフォンやパソコンなどに触れない

よく聞く話ですが、就寝前にはスマートフォンやパソコンの使用を避けたいところ。

画面から発せられる「ブルーライト」を夕刻以降も浴び続けていると、脳が「昼間だ」と勘違いしてしまい、自然な眠気がなかなか訪れなくなるからです。

また、ゲームなど画面が激しく動くものや、SNSでのコミュニケーションなども、脳を活性化させてしまうため不眠につながりやすくなるのだとか。

さらには、リビングや寝室の照明に蛍光灯を使うのも避けるべきだといいます。蛍光灯の青白い光は、ブルーライトに近い波長を持っているからだというのがその理由です。(206ページより)

夕食、団らん、入浴などをゆったり楽しむ

食事をゆったりとったり、家族と団らんしたり、入浴を楽しむことなどは、交感神経の緊張をほぐして副交感神経への切り替えを促進するおすすめのリラックス法だそう。

ただし、寝る前に暑すぎるお風呂に長く入ることは避けたほうがよさそうです。なぜなら自然な眠気は、一度上がった体の深部体温が低下してきたときに訪れるものだから。

とくに夏場は、入浴によって深部体温を上げすぎると、下がるまでに時間がかかるもの。暑いお湯が好きな人は、寝る直前ではなく、少し前に入浴すべきだということです。(207ページより)

夕方からはカフェインを避ける

コーヒー、紅茶、緑茶などでカフェインをとると、約5時間は覚醒効果が続くとされています。

したがって、夕方からは飲まないほうが無難。代わりに著者は、麦茶、ハトムギ茶、ハーブティーなどのノンカフェイン飲料を勧めています。(207ページより)

寝る2〜3時間前に夕食を済ませておく

食事をすると胃腸の働きが活発になり、眠りを阻害されるそう。

そのため夕食は寝る時刻の2〜3時間前までに終えておくのが理想だといいます。残業でどうしても食事が遅くなるという場合は、思い切って職場で夕食を済ませてしまうなどの工夫も有効。(208ページより)

適度な飲酒を心がけ、寝る3時間前からはアルコールを飲まない

アルコールが体内に残っていると、睡眠の質が悪化してしまいます。

晩酌する場合は、健康を損なわないとされている「適量飲酒量」(ビールなら750ml程度、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯程度)にとどめ、眠る約3時間前には飲み終えるようにするべきだといいます。(208ページより)

暗く静かで、適切な温度の寝室で眠る

テレビを見ていたらソファでウトウトしてしまい、気がついたら朝になっていたというような経験がある方は少なくないかもしれません。

しかし当然のことながら、そうした眠り方では深い睡眠をとることができません。睡眠中の光や音は熟睡を阻害するため、疲労回復が妨げられてしまうわけです。

そこで基本的には、暑すぎず寒すぎず、部屋の温度が適切にコントロールされた真っ暗で静かな部屋で眠るべき。真っ暗が苦手だという人は、豆電球程度のほのかなあかりにするといいそうです。(208ページより)

睡眠をきちんととれば、風邪などの体調不良も起こりにくくなるそう。また、仕事でも安定したパフォーマンスが出せるはず。そこで、質の高い睡眠がとれるよう、セルフケアを心がけてほしいと著者は記しています。

著者は経験上、1人のビジネスパーソンが入社から定年までの間に、少なくとも3回は「心の危機」に陥る可能性が高くなると考えているのだそうです。

だからこそ、大切なのは「備え」。本書を参考にしながら、心と体を健康な状態に保ち、いきいきと働けるようにしたいものです。

Source: 日経BP

メディアジーン lifehacker
2021年6月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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