変化の時代に考えるニュースの希望

レビュー

5
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ニュースの未来

『ニュースの未来』

著者
石戸諭 [著]
出版社
光文社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784334045593
発売日
2021/08/18
価格
946円(税込)

書籍情報:openBD

変化の時代に考えるニュースの希望

[レビュアー] 碓井広義(メディア文化評論家)

 コロナ禍の前、大学の教室で「新聞を日常的に読む人は?」と訊いたことがある。約100人中、手を挙げたのは1割弱。多くの学生は「ニュースはネットで読む」と答えたが、誰が書いたものなのかを意識している者は少なかった。

 石戸諭『ニュースの未来』はニュースの未来を憂えた本ではない。むしろ逆だ。希望があることを示している。現在ノンフィクションライターの石戸は、新聞社とインターネットメディアの両方で働いてきた。つまり、ニュースとメディアの関係の変化を当事者として考察してきた。本書は「体験的メディア論」と呼びたくなる一冊だ。

 キーワードは「良いニュース」。石戸の定義は「事実に基づき、社会的なイシュー(論点、争点)について、読んだ人に新しい気づきを与え、かつ読まれるもの」である。

 さらに、それを成立させる大事な要素があるという。「謎」「驚き」「批評」「個性」「思考」の5つだ。中でも、読者に物事を理性的・論理的にとらえる「遅い思考」を促すことは、ネットに氾濫する、感情を刺激するだけのニュースへのアンチテーゼでもある。

 興味深いのは、ネット上に置かれた記事は、たとえ時間が経過しても「ニュース」であり続けるという指摘だ。読者にとっては「新しい=速報のアップデート」ではなく、いつの時点であろうと「知らないことを知ること=新しいこと」だからだ。それはニュースの未来にも繋がっている。

新潮社 週刊新潮
2021年10月14日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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