【自著を語る】天皇陛下との青春――織田和雄『天皇陛下のプロポーズ』

レビュー

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天皇陛下のプロポーズ

『天皇陛下のプロポーズ』

著者
織田 和雄 [著]
出版社
小学館
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784093886697
発売日
2019/02/18
価格
1,870円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

天皇陛下との青春

[レビュアー] 織田和雄

今上天皇の退位を受け、2019年5月1日に皇太子殿下が新天皇に即位されます。それに伴い、元号も「平成」から「令和」へと改元されます。70年前から天皇陛下のご友人として親しい仲だったという織田和雄さん。今まで謎だった陛下のプロポーズのお言葉を、先月発売された『天皇陛下のプロポーズ』の中ではじめて明かしています。さらに本書でも明かされることのなかったプロポーズ直後のエピソードも大公開! 著者の織田和雄さんにお話を伺いました。

 ***

 今年四月末を以て平成が終わります。

 多くの国民にとって、時代の節目を迎えることは、新しい世の中が動き出すことへの期待と、様々な思い出に彩られた過去への惜別が絡み合い、とても一言では言い表せない思いが胸に去来していることでしょう。

 私にとって、平成の時代に終止符が打たれるというよりも、今上天皇が退位されるという事実に対して、ひとしおの感慨を抱かざるを得ません。思えば天皇陛下とご一緒に無我夢中でテニスに打ち込み、またご家族の団欒にも加わらせて頂き、早七十年もの歳月が通り過ぎていきました。その間、親しくお付き合いをさせて頂いた友人の一人として、陛下から賜った数々の御恩にいささかも報いてこなかったことが今更ながら悔やまれてなりません。

 退位にあたって少しでも陛下のお心を安んじて差し上げることができたらと願い、上梓したのが、拙著『天皇陛下のプロポーズ』でありました。

 天皇陛下がまだ皇太子だったころ、夏の軽井沢で偶然に出会った美智子さまと、いかにしてご結婚されたのか、お二人の間で電話取り次ぎ係を務めた私が、陛下と美智子さまの輝かしい青春の記録として残しておきたいとの思いから一気に書き上げた次第です。

 詳しくは拙著『天皇陛下のプロポーズ』をお読み頂ければ、お二方のご結婚に至るまでの日々は、実にドラマチックで意外性に富み、山あり谷ありであったのかを知って頂けるものと思います。一言で言えば、どんな恋愛映画でも描けないほどの、珠玉のラブロマンス。そこには特別なお立場にある陛下の深い哲学も……。

 拙著の中で敢えて書かなかったこともありました。陛下のとても人間的な一面を感じさせるほのぼのとしたエピソードなのですが、今回、それを初めて明かしておきましょう。

 それは、陛下がプロポーズをなさり、美智子さまからイエスの返事をもらった一週間後のことです。私の日記には「チャブーミッチ 大部のろける」と書いてあります。チャブとは、当時、ご友人たちが呼んでいた陛下のニックネームで、ミッチとは美智子さまのこと。

「大部のろける」と書いたことからも分かるくらい、この日、陛下はとても嬉しそうでいらっしゃいました。なにしろ民間から初めて皇太子妃を迎え入れることは、極めて高いハードルでした。

 陛下としてもそのお立場もありますから、自由恋愛など考えることすら許されない時代で、悩みも苦しみもあったはずです。しかし、陛下は決してあきらめませんでした。

 そのご苦労が報われ、美智子さまを晴れて皇室に迎え入れることができる喜びは、どんなに「のろけ」ても許されるものだと、私自身嬉しかったことを覚えています。

 陛下と美智子さまはご結婚以来、本当に仲睦まじくお過ごしになられています。テニスでダブルスを組まれると、美智子さまからの「お願~い!」の一声で陛下が懸命に追いかけてボールを拾い、その都度「ありがとう」とお声を掛けられます。ダブルスは夫婦で組むともめる場合が少なくないのですが、両陛下の辞書には喧嘩という文字はないと思えるほど、いつもさわやかで息の合ったチームプレイを見せてくださいます。

 去年十二月のお誕生日記者会見では、美智子さまについてお言葉を述べられた時、陛下は涙声になって感謝の意を表されていたように思います。また今年の天皇陛下在位三十年記念式典のスピーチでは、陛下が原稿の順番を間違われた時も、美智子さまがサポートされる姿がとても印象的で、「ああ、やはりお二人はいついかなる時も、ずっと仲がよろしいのだなぁ」と感じ入った次第です。

 今、私は拙著『天皇陛下のプロポーズ』の表紙となっている、テニスコートのベンチでくつろがれる陛下と美智子さまのお写真に目を細めながら、ご退位された後は、どうぞ再びお二人で大いに「のろけ」て頂きたい……そんな風に思っています。

小学館 本の窓
2019年5月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

小学館

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