“元AKBの副業”レベルじゃない客単価2000円の本格ラーメン店

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ラーメン女王への道

『ラーメン女王への道』

著者
梅澤愛優香 [著]
出版社
さくら舎
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784865812893
発売日
2021/04/08
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

“元AKBの副業”レベルじゃない客単価2000円の本格ラーメン店

[レビュアー] 吉田豪(プロ書評家、プロインタビュアー、ライター)

 ちょっと前、完全予約制で事前に2000円分のチケットを売る彼女のラーメン店がツイッターで話題になり、「業界が悩み続けてきた客単価2000円の壁を突破するための答えが、まさか『アイドルになって固定客とスポンサーを見つける』だったとは!」などと言われていた。要は元AKBの子がラーメン屋を開業してうまいことやってる的な話なんだが、そこに大きな誤解がある。

 彼女は正確にはバイトAKBという時給1000円で働くメンバーで、仕事はバックダンサーや前座だったから「自分の名前を名乗れるものはあまりありませんでした」。つまり、ほとんど固定客なんかいなかったし、本を読む限りではスポンサーらしき人物も存在しない。しかもバイトAKBは2014年8月に企画が始まり、契約期間は翌年の「2月末日まで、その後、3か月契約更新」と言われていたのに、契約更新も昇格もなくわずか半年で全員が契約終了。当時高校3年生で「調理系の専門学校への進学手続きも進めて」いた彼女は、進学を諦めてバイトAKBに専念しようとした矢先にいきなり突き放されたわけなのだ!

 こうして無職になったものの、もともと彼女は「部活は料理研究部で、趣味はラーメンの食べ歩き。アルバイトはスーパーの惣菜調理」だったので、製麺機も買って独自にラーメンを研究。その流れで本格的な火力でラーメンを作れる厨房が欲しくなり、居抜きで安く店を始めたら、気が付くとどんどん店が増えてたってことらしい。もちろんアイドルという肩書を利用することにはメリットもデメリットもあって、一時は「梅澤愛優香は自分でラーメンをつくっていない」「背後にいる反社の男に雇われている」などとネットで誹謗中傷されたけど、開示請求して相手の身元を特定する方法も詳しく紹介! いちいち強いし、AKBメンバーの副業よりずっと上手くいってそうなのもさすがなのである。

新潮社 週刊新潮
2021年7月15日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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