『日本共産党』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
<書評>『日本共産党 「革命」を夢見た100年』中北浩爾 著
[レビュアー] 米田綱路(ジャーナリスト)
◆反共との相克の歴史たどる
安倍元首相の銃撃事件を機に、自民党議員と旧統一教会との接点が次々と明るみに出るが、元々両者を繋(つな)いだのは反共主義だった。日本共産党の百年は、この反共との相克の歴史でもある。本書はそれを反照する大河的な党史だ。
同党は、明治以来の日本の社会主義運動の展開と、ロシア革命の衝撃という二つの歴史的文脈が交差する地点から出発したと著者はいう。反共の最たる治安維持法はこの党を主敵に制定された。度重なる弾圧で組織は壊滅したが、日本の指導層も国民も実態と亡霊の別なく、同党と背後の国際共産主義に怯(おび)え続けた。その心性は戦後も途切れず、敵国だったアメリカの反共主義と結託して、日米安保体制の基盤を形成するのである。
同党に一貫しているのは、民主主義革命から社会主義革命へという二段階革命論と、民主集中制だ。米ソ冷戦とともに党は反米に転じ、中ソ共産党の後押しで武装闘争方針を採る。レッドパージのもと派閥抗争に明け暮れ、非公然活動でスパイを恐れて査問やリンチに手を染め、犯罪的な手法で資金調達に走った。そこに非合法を強いられた戦前と同じ問題が生じたとする本書の指摘は、武装闘争の限界を物語る。レーニンに由来する分派禁止の民主集中制が、平和革命路線へと転換した後も党内引き締めのタガとなり続けている点も見逃せない。
この路線転換は五五年体制の成立と同時期である。保守合同の理由の一つは反共であり、これこそ自民の党是だった。一方、野党は共産党との関係が分裂や連携の力学となったことがわかる。社会党は安保闘争で同党と共闘したが右派が離反して民社党の結党に至る。近来では旧民主党系が同党との選挙協力をめぐって分裂している。その支持母体である連合は、そもそも同党を排除する社公民路線と表裏一体の、反共労働戦線統一の結果生まれたものだった。
共産党が自主独立路線で冷戦後を生きのびた背景には、独自の「民族民主革命論」があった。同党が夢見た革命とは何かに切り込む本書からは日本政治の選択肢が見える。
(中公新書・1210円)
1968年生まれ。一橋大大学院教授。著書『自民党政治の変容』など。
◆もう1冊
佐高信著『池田大作と宮本顕治 「創共協定」誕生の舞台裏』(平凡社新書)