<東北の本棚>地域性と技術接点探す

レビュー

4
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伊東豊雄 美しい建築に人は集まる

『伊東豊雄 美しい建築に人は集まる』

著者
伊東 豊雄 [著]
出版社
平凡社
ジャンル
工学工業/建築
ISBN
9784582741247
発売日
2020/06/26
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>地域性と技術接点探す

[レビュアー] 河北新報

 「せんだいメディアテーク」(仙台市青葉区)や東日本大震災の被災地に建てた「みんなの家」の設計など、東北と関わりの深い建築家が半生を振り返る。国内外で活躍し、第一線で走り続けてきたが、昨年1月に脳梗塞を患った。「建築とは何か」。深夜の病室で思考を巡らせたという。
 現代の美しい建築を探求する、厳しい姿勢が印象的だ。過去の作品群と誠実に向き合い、時に「建築家の無力さを思い知らされた」と自省する。
 例えば、最初の「みんなの家」である仙台市宮城野区の集会所。被災住民に歓迎され、語らいの場となった。それでも被災者の心象風景を反映させた「自分たちの明日の町」を一緒に実現する難しさを挙げ、「最高の作品と自分で言えるものをつくるべきだった」「自分の建築が変わらないとダメなんだ」と考える。
 著者の思考の根底には、20世紀の都市化や工業化に伴って発展したモダニズム建築に対する疑問がある。超高層ビルが立ち並ぶ都市や巨大な土木工事に対する違和感。震災後の東北に通い、経済優先の都市と異なる尺度で生きる人々と出会ったことも影響したという。土地の歴史や地域性を踏まえつつ、現代技術を使った建築との接点を見つけることが、「僕が目指そうとしている建築」だと書く。
 作る過程を重視したメディアテークと不採用だった新国立競技場計画案に関する記述も興味深い。二つの施設を対比し、公共建築の魅力や民間資金活用による社会資本整備(PFI)の課題を浮き彫りにした。
 多彩な分野の先駆者による自伝「のこす言葉」シリーズの一冊。柔らかな語り口調でつづられ、建築の奥深さや面白さを教えてくれる。(和)

 平凡社03(3230)6573=1760円。

河北新報
2020年9月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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