なぜ有力候補ばかりがテレビで取り上げられるのか? 政治とメディアの密接な関係

レビュー

4
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください

『ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください』

著者
西田 亮介 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784534059161
発売日
2022/03/25
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

なぜ有力候補ばかりがテレビで取り上げられるのか? 政治とメディアの密接な関係

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

現実問題として、生活と政治の関わりは、日常生活のなかにおいてはほとんど実感できないもの。しかも、そもそも政策の話はなにかと難しくもあります。

年齢を重ねるほど、「実はよくわかっていないんだけれど、恥ずかしくて聞くに聞けない」という状況に陥ってしまうこともあるのではないでしょうか?

そこで参考にしたいのが、『17歳からの民主主義とメディアの授業 ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください』(西田亮介 著、日本実業出版社)。政治とメディアを専門分野とする社会学者である著者は、本書の内容について次のように述べています。

そもそも本人に会ったこともなく政治や行政についてよく知りもしないのに、なぜ選挙を通じて選択しないといけないのか、なぜやけにえらそうなコメンテーターや識者に「投票には行くべきだ」などとお説教されなければいけないのかどうも腹落ちしない。

……そんな人たちに向けて、気軽に手に取ってもらえる、わかりやすい一冊が必要だということで用意したのが本書です。政治とメディアの疑問にわかりやすく答えます。(「はじめに」より)

かなり素朴に政治とメディアを考える、なかなか類を見ないユニークな仕上がりになったと自負しているそう。政治入門の本はたくさんあるものの、政治とメディアの入門書は意外と少ないというのです。

しかも一問一答式になっているため、気になるところや興味を持てたところだけを拾い読みしてもOK。語り口も構成もソフトでわかりやすいので、本書の内容を親子で論じ合うことも可能かもしれません。

きょうはそんな本書の講義4「メディアと政治の本当のはなし」のなかから、「そもそも私たちはメディアを信じて大丈夫なんですか?」に焦点を当ててみたいと思います。

なぜメディアは有力候補を追いかけるのか

ご存知のとおり、昨今は政党や政治家もインターネットでの発信に積極的。

いうまでもなく若い人に届けたいという思いがあるからで、InstagramやTwitter、YouTube、TikTokなどが利用されているようです。

「メディア(media)」は媒介(者)を意味する「メディウム(medium)」の複数形です。長く「どう報じられるか」が関心事でしたが、最近は「どう発信するか」に関心が向いています。発信コストが下がったからです。(193ページより)

ところで選挙に際しては、「テレビが選んだ人」を選んでいる気がすることがあるのではないでしょうか?

そしてそこには、「自分で選んでいる気がしない」という感覚も絡まってくるはず。このことに関しては、マスメディア報道ならではの特徴を指摘することができるのだと著者はいいます。

マスメディアは「有力候補」の主張を中心に取り上げ、報じていきます。これにはメディアの都合が関係しています。

取材に割くことができる記者の数は限られていますし、最近は記者も減り続けています。もう皆さん本当に忙しいんですね。

しかも最近はテレビも新聞もネット向けにも記事を出していかなければならなくなっています。その割には人は増えていないんですね。

どうしても、まずは有力候補者の動向や発言を追うことが中心になります。(194ページより)

さらにはもうひとつ、紙面やテレビの場合は“尺(紙面のスペースや放映時間)”の制限もあります。そのため、政党の公認を受けている、支持を受けている、あるいは現職などを「有力候補」として位置づけ、そういう人たちの動向が中心になっていくわけです。

一方、それ以外の人たちは「泡沫候補(ほうまつこうほ)」と呼ばれ、視聴者数の多いマスメディアにはあまり取り上げられないことになります。

これはやむを得ないことでもあるのですが、これから政治の世界に入っていこうとする新規参入者(新人候補)にとっては不利な状況。組織の支援を受けていない無所属の候補者にとっても、やはり不利になるでしょう。

つまり政治の世界では、「現職有利」をメディアが強化している側面があるのです。(192ページより)

テレビの影響力はいまだに強い

いまや若い層の情報収集源はインターネットですが、とはいえテレビの影響力はいまでも相対的にとても大きいのだそうです。

こうしたテレビならではの大きな影響力を踏まえて、テレビは放送法という法律で規律されています。

放送法の目的には他のメディアに関する規制では見られない「表現の自由の確保」や「健全な民主主義の発達に資する」といった表現が含まれます。(196ページより)

諸説あるものの、テレビはだいたい視聴率1%あたり数十万人〜百万人程度の視聴者がいるといわれています。有力な報道番組や情報番組だと、全国をネットしながら視聴率10%ということになるので、1千万〜数千万人がその番組を見ていることになります。

たしかに現代において、インターネット・メディアはメディアの中心的存在です。しかしそれでも、ひとつのテレビ番組が持っている視聴者数は、まだまだ無視できない規模だというのです。

試聴行動の習慣性もそうです。特に、何曜日の何時からと決まっていたり、さらに毎日何時から何時までと帯で放映されていたりする番組だと、曜日や時間帯が決まっています。

つまり、その曜日のその時間に番組に対する固定ファンが、テレビの前で数千万人という規模で視聴していることになります。選挙という数を競うゲームとの相性は抜群です。(198ページより)

ネットやSNSでは各人がバラバラのものを見ているため、実際の効果にはよくわかっていない部分があります。しかし、テレビはそこを補完しているわけです。

テレビで有力候補として取り上げられる候補者が、いまなお大きな存在感を持てることには、こうした事情が影響しているということです。(196ページより)

今夏には参院選が控えているので、今後はメディアによる選挙関連の報道も多くなることでしょう。そんなときだからこそ必要なのは、少しでも多くの考え方に触れること。

だからこそ、“多様な「偏り」こそ人間性の源”であるという考え方に基づき、なるべく複数の議論を紹介しつつ、積極的に特定の立場を表明しているという本書は役立つはずです。

Source: 日本実業出版社

メディアジーン lifehacker
2022年4月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • このエントリーをはてなブックマークに追加