大矢博子 ジャニ読みブックガイド
2017/11/15

「ラストレシピ」は2度美味しい ニノ担なら原作・映画どっちも楽しむべし[ジャニ読みブックガイド第13回]

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 どんないくつもの言葉よりもたった一つの言葉がいい皆さん、こんにちは。クリアファイル目当てにコンビニの惣菜を買い込み、ニノになりきってビフかつサンドを頬張る日々です。ってことで、今回のジャニ読みはもちろん、この映画だ!

■二宮和也(嵐)主演&西畑大吾(関西ジャニーズJr.)出演!「ラストレシピ 麒麟の舌の記憶」

 11月3日に公開された映画「ラストレシピ 麒麟の舌の記憶」(東宝)の原作は、田中経一の同名小説『ラストレシピ 麒麟の舌の記憶』(幻冬舎文庫)。2014年に刊行された『麒麟の舌を持つ男』が映画化に併せて改題・文庫化された。原作のストーリーはこんな感じ。

 天才料理人・佐々木充は、高額報酬と引き換えに「人生の最後に食べたい思い出の味」を再現するという仕事をしていた。そんな彼のもとに北京から依頼が来る。昭和初期、宮廷料理人だった山形直太朗が軍の命令を受け、満漢全席をしのぐコース料理として満州で考案した「大日本帝国食菜全席」を再現して欲しいというのだ。依頼者は90歳を超える楊晴明。当時、山形とともに料理を完成させた料理人だが、戦争中にレシピは消え、今はどこにあるかわからないという。充はレシピ探しに乗り出すものの、依頼の背後に何やら胡散臭いものを感じて……。

 原作も映画も、充が主人公の2000年代の現代日本と、山形の奮闘を描く1930年代の満州がほぼ交互に語られるという構造。ただ、原作はサスペンス色が強く、レシピの行方も、山形夫妻の最期も、彼らの遺児のその後も、料理の描写も、真相に至る道筋も、映画では大きく改変されている。え、そんなに違うんなら映画と原作はまったくの別物では? 

 ところがそうじゃないから面白い。物語が目指すところが共通しているのだ。同じ材料を使って工程も途中まで一緒で、でも途中に原作にない材料と調味料を加えたみたいな感じ。うん、原作が肉じゃがなら映画はカレーかな。そして肉じゃがの醤油である某人物がいない代わりに、原作にはない大事なカレースパイスが加えられた。それが関西ジャニーズJr.の西畑大吾くんなんだが──それは後述するとして、やはりニノの話からいこう。

イラスト・タテノカズヒロ

■これぞジャニ読み本。原作の充は素のニノに近い!

 映画を観る前に原作小説を読んだ際、当然、充にニノを当ててジャニ読みした。そしたらば読み出してすぐ、ほんの数ページで何度も大笑いしてしまったよ。だって原作の充の語り口調が、ライブのMCやバラエティでわちゃわちゃやってる時のニノにそっくりだったんだもの!

 職業について尋ねられ、「ええ、まあ、そんなことをしていますね」
 北京に来て欲しいと言われ「ええっ、明日ですか? 冗談でしょ?」
 破格の報酬を持ち出され「あなた、本気で言ってます?」

 ファンじゃない人にはわからないだろうけど、ニノ担さんにはきっと通じるはず。これらのセリフって、すごくニノっぽいと思わない? ニノってツッコむとき丁寧語になるんだよね。普段ニノがよく言うのは「冗談でしょ?」じゃなくて「嘘でしょ?」だけど、違うのはそこくらい。だから原作を読んだとき、まんまニノのあの言い方で再現されたのさ。何だよこれ、ニノ、素でできるじゃん!

 では映画ではどうだったか? 原作よりかなり屈折したキャラになっていたので、残念ながら上記のニノっぽいセリフは削られてた。素でできるどころかセリフも表情も細部に至るまできっちり作り上げられてた。さすが日本アカデミー賞最優秀主演男優賞俳優(ニノの芝居についてはすごく書きたいことがあるので、年末にまた別のニノ出演作を取り上げます。刮目して待て!)。
 映画では俳優・二宮和也の芝居をたっぷり堪能できる。その一方で、原作小説は素のニノで当て読みできるという、ニノ担にはどっちに転んでも美味しい作品なのだ。

 でね、面白いのは、だからといって「原作と違うじゃん!」とは思わなかったってこと。これは原作の筆致のせいなのだ。
 これまでこのコラムで紹介してきた原作は、文体で世界観を作り出すタイプや、個性的なキャラクターで読者の感情移入を誘うタイプが多かった。ところがこの原作は、もともと田中経一がそういう性質なのかそれともデビュー作だからかはわからないけど、キャラクターや文体に過剰な色がついてない。キャラや文体ではなく、モチーフと情報と構成で読者を引っ張るタイプの小説なのだ。それが功を奏した。

■映画オリジナルの役柄を見事に演じた西畑大吾

 原作ファンが映像化に不満を抱くのは「キャラがイメージと違う」という場合が多い。だが、こと本書に限ってはもともと特定のイメージをキャラに持たせてないからズレようがないのだ。
 いやあ、これは芝居しがいがあると思うよ。だって監督と俳優が自由にイメージを膨らませる余地がいっぱいあるんだもの。それが結実したのが、ラストシーンの、正面からのニノのアップだ。あの表情で、原作と映画がひとつの芯で結ばれたのである。ぜひ原作を読んで欲しい。いろんな要素が映画とは違うけど、芯が同じだってことはちゃんとわかるはずだから。

 そして特筆すべきは映画オリジナルキャラの鎌田を演じた西畑大吾くんですよ! 西島秀俊さん(最期の瞬間の表情たるや)演じる山形の助手として満州に渡る役。ほら、西畑くんといえば、NHKの朝ドラ「ごちそうさん」で、やっぱり戦時中を舞台に料理好きの少年・活男を演じてたでしょ? 坊主頭も絶品で関西Jr.の昭和担当みたいになってるけど、あれも良かった。

 だけどあのドラマでは、せっかく料理のために営繕兵として出征したのに戦死してしまったよね。それがこの映画では、満州で楽しそうに料理してるのよ。しかも生き残って、70を超えても料理してるのよ。よかったなあ活男……とニコニコして見てたんだけど……これ以上は言えない。だがホント、西畑くんにぜひ注目願いたい。彼こそ、肉じゃがをカレーに変えた最重要スパイスですよ。

 最後に、ジャニーズネタじゃないけど、どうしても書きたい。若き日の楊晴明を演じた兼松若人さんが素晴らしかった! 映画の後でパンフレット見るまで、中国ネイティブの俳優さんだと信じ込んでたよ。いくら原作をジャニ読みしようとしても、若き楊はもう兼松さん以外に考えられない。調べたら、山田涼介くんの「左目探偵EYE」やヒガシの「刑事7人」にも単発で出演してる俳優さんじゃないか。西畑くんとのコンビをまた何かで見たいな。

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アンケート このヒーローにはどのジャニーズ?【13】

 料理人が活躍するミステリと言えば、近藤史恵『タルト・タタンの夢』(創元推理文庫)に始まる〈ビストロ・パ・マル〉シリーズ。小さなフレンチレストランを訪れる客の悩みや事件を、シェフの三舟が鮮やかに解き明かします。しかも料理描写が絶品で、食べたくなること請け合い。
 プロフェッショナルで、ちょっとぶっきらぼうで気難しく見えるけど、本当は優しいシェフ。彼は謎を解くだけでなく、悩めるお客さんに最適の一皿を出して、胃と心を同時に温めてくれるのです。
 そんな三舟シェフを演じるなら……大矢のチョイスは、V6の坂本昌行くん! 料理上手だし、コックコートも似合いそうでしょ?
 あなたなら、誰に演じてほしい?


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