大矢博子 ジャニ読みブックガイド
2021/08/04

三宅健主演「親指さがし」変わらない健くんと、様変わりしたストーリー どちらが衝撃?

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 永遠なんかにキョーミはないけど泣いた皆さんこんにちは。ジャニーズ出演ドラマ/映画の原作小説を紹介するこのコラム、前回のニノ初単独主演映画に続き、今回は健くん初単独主演映画のコレだ!

■三宅健(V6)・主演!「親指さがし」(2006年、ザナドゥー)

 15年前の映画である。15年前。27歳の健くん。27歳。今や42歳となった健くんが、27歳の時の映画……いやいやいやいや待て待て待て待て。ぜんぜん変わってないんですけど? 今と違うの髪型だけなんですけど? え、何なのこれ。どういうこと? ちょっと意味わかんない。時空歪んでる……?(混乱)

 いやはや、「三宅健は歳をとらない」というのはファンの間ではよく指摘されることだけども、カミセンでは剛くんがどんどんシブくなっていって、岡田くんはどんどん厚くなっていったから、彼らと比べて「相対的に」歳をとらないってことだと思ってたのよ。でも、こうして古い映像を見ればわかる。これ「絶対的に」歳とってないわ。なるほど、これがV6の妖精か。

 ついでに言えば、これよりさらに5年前、健くんが22歳のときに出演した「ネバーランド」(2001年、TBS)というドラマがありまして。共演が今井翼・生田斗真・村上信五・田中聖とというジャニオタにはたまらない作品で、斗真なんてまさにメタモルフォーゼの途中で懐か死しちゃうというのに、健くんはこの時点ですでに今と同じだからね? 妖精っつーか不老不死なんじゃないかとすら思えてきた。遠い将来、地球が滅亡する日、最後の人類としてそこにいるのは今と変わらない健くんなのではないか。

 で、この「ネバーランド」は恩田陸さんの原作『ネバーランド』(集英社文庫)がぜひ皆さんにお読みいただきたい素晴らしい小説で、実はこっちを取り上げようと思ってたわけですよ。なのになぜ「親指さがし」なのか。それは、健くんが現在、WOWOWで放送中の「黒鳥の湖」に出演してるから。「黒鳥の湖」は次回取り上げる予定なので、その対比として出すなら「ネバーランド」より「親指さがし」でしょ、と。その理由は後ほど。

 ということで前振りが異様に長くなったが(だってこの「変わらなさ」の衝撃をどうしても吐き出したくて……!)、原作は山田悠介の同名小説『親指さがし』(幻冬舎文庫)。2001年に『リアル鬼ごっこ』(幻冬舎文庫、小学館ジュニア文庫)でデビューして以来、エンタメ度の高いテンポのいいホラーで若年層に人気の著者の、初期作品(デビュー3作目)である。が、いやもうこれが、原作と映画はほぼ別物ってくらい改変されてたから驚いた。


イラスト・タテノカズヒロ

■映画と原作、まるっきり違う!

 とりあえずベースとなるエピソードだけは共通しているので、そこから紹介しよう。主人公は今年20歳になる沢武。彼は7年前(映画では8年前)に行方不明になった同級生、由美(映画では由美子)のことをずっと気にしていた。当時、ふたりを含む仲良し5人組(映画では6人組)で呪いのゲーム「親指さがし」をやって以来、由美の姿が消えたままなのだ。

「親指さがし」とは、バラバラ殺人の被害者の切断された親指を探すというもの。皆で輪になり隣の人の左手の親指を隠すように手を繋ぐ。そして呪文を唱えるとその殺害現場にワープするので、そこで親指を探すのだ。部屋にあるろうそくを吹き消せば戻ってこられるというルールがあり、その場で怖い目にあった武たちは早々にろうそくを消して事なきを得た。が、由美だけは帰ってこなかったのである。

 20歳になった当時のメンバーたちはあらためて過去のことを調べ始め、そのゲームの発祥にかかわったと思われる過去の事件に行きあたった。しかしそこからひとり、またひとりと殺されていく。そしてその遺体からは親指が消えていた……。

 というのが基本設定。健くんが演じたのは主人公の沢武だ。消えた幼馴染を心配し続け、呪いの謂れを調べようとするというのは同じなんだけども、そこからがもうまったく違う。エピソードの順番が違うとか登場人物の設定が違うとかから始まり、途中からはストーリーの流れも起きる事件も完全に別物。いなくなった由美(子)のその後も異なる。何より最大の違いは、原作はホラーだが映画はミステリということだ。

 ホラーとミステリの違いを厳密に語るのは難しいが、ここでは、原作は呪いや霊といった超常現象が殺人事件を起こし、それに相対する恐怖やパニックを描いているのに対し、映画では「真相を推理する」という作りになっている。オカルティックな出来事とは別に「犯人が存在する」と言ってもいい。目に見える事象としては、連続殺人事件だしね。

 したがって事件の展開も結末も映画と原作ではまったく異なるので、映画しか見ていない人は原作でもうひとつの物語を確認してみていただきたい。

■「親指さがし」を踏まえて、放送中の「黒鳥の湖」を観てみると

 原作と映画のどちらが好きかは人によるだろうが、「結末が違う」というのは、映画の武がアレだったのに対し、原作はそうではないということで。ファンは武の違いに特化して原作を読むのもいいかもしれない。

 原作の武は映画の武とはまた違った意味で行動的で、図書館で過去の事件を調べたり、いわくつきの別荘に乗り込んだり、事故に遭って辛くも助かったりする。危険な目に遭っている仲間を助けるために走るし、格闘する。親に反抗する若者っぽい場面もある。どれも映画には存在しない、あるいは映画とは見せ方が違うエピソードなので、映画の武とはまた違う武を健くんに当てはめて読むのも楽しいのでは?

 それにしてもどうしてホラーの登場人物って、狙われてるってわかってるのに、そりゃそんな時間にひとりでそんなとこに行ったら殺されるわなという場所に率先して行くんだろう……。

 で、なぜ今回が「親指さがし」だったかというと。前述したように、現在健くんはドラマ「黒鳥の湖」(WOWOW)に若院という役で出演している。寺の住職の息子役だ。吉瀬美智子さん演じる女性の娘が行方不明(おお、「親指さがし」と同じだ!)になってしまい、救いを求めて寺に行くと優しい若院様が救ってくださるという設定。

 映画版「親指さがし」の武と「黒鳥の湖」の若院は役どころとしてもキャラクターとしてもまったく違うし、インタビューでも健くんは「これまでやったことのない役」と言っているのだけれど、実は、少しだけ共通している要素があるのよ。ネタバレになるので具体的には言えないんだけれど、ドラマが進んでいけば「ああ、ここか」というのがわかってくるはず。

 それがわかった時点で、「親指さがし」の健くんのお芝居と「黒鳥の湖」でのそれを比べてみてほしいのだ。見た目は15年経ってもまったく変わらない妖精の健くんだけど、おそらくお芝居は変わっていると思う。きっと妖精の成長が見られるに違いない!

 ということで次回、8月18日の更新では「黒鳥の湖」を取り上げるのでお楽しみに。……あれ? 映画版「親指さがし」ですべてが始まったのって8月13日だったような……そしてそこからの数日で次々と殺人事件が起きて、えっと8月18日あたりってちょうど……。

大矢博子
書評家。著書に「読み出したら止まらない!女子ミステリーマストリード100」など。小学生でフォーリーブスにハマったのを機に、ジャニーズを見つめ続けて40年。現在は嵐のニノ担。

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