大矢博子の推し活読書クラブ
2023/04/05

目黒蓮主演「わたしの幸せな結婚」映画の先を原作でチェックしたところ……続編熱烈希望!

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 貴方を想って胸が鳴く皆さんこんにちは。ジャニーズ出演ドラマ/映画の原作小説を紹介するこのコラム、今回はめめの単独初主演映画だ!

■目黒蓮(Snow Man)・主演、大西流星(なにわ男子)、佐藤新(IMPACTors/ジャニーズJr.)・出演!「わたしの幸せな結婚」(東宝・2023)

 役者・目黒蓮の快進撃が止まらない! 「Silent」(フジテレビ)、「舞いあがれ!」(NHK)と来て、映画「月の満ち欠け」(松竹・2022)で日本アカデミー賞優秀助演男優賞と新人俳優賞を受賞……これがほんの半年の間なんだから、おい無茶早いな! でもめめじゃ別に言うほど早くないか。めめやばいな、もう(わかる人だけわかって)。

 その怒涛の勢いのまま、ついには映画主演である。それがなんと異能を操る和風ファンタジーにしてベタベタあまあまの恋愛ものとは。原作よりアクション多めで、きゅんきゅんしたりにやにやしたりハラハラしたりで情緒が渋滞起こしたわ。

 原作は顎木あくみの同名小説『わたしの幸せな結婚』(富士見L文庫)。現在6巻まで刊行されているが、映画はそのうち1巻と2巻を下敷きにしている。舞台は明治・大正の日本を彷彿させる世界。特殊な能力「異能」を持つ家系に生まれながらその才を受け継がなかった斎森美世は、継母や異母妹から虐げられて使用人同様に育つ。そして、高貴な家柄ではあるが冷酷無慈悲と評判の久堂清霞の元に身ひとつで強制的に嫁がされることに。

 清霞は初っ端から「ここでは私の言うことに絶対に従え。私が出ていけと言ったら出て行け。死ねと言ったら死ね。文句や反論は聞かん」と冷酷っぷりを発揮するが、虐げられ慣れている美世にはまったく効かず、むしろ当然のように「かしこまりました」と返す。これまでの嫁候補とは違う美世に清霞は驚いて……。

 というのが物語の導入部。ここからさまざまなエピソードを通して、美世と清霞が想いを通わせていくという展開である。意地悪な継母や異母妹にいじめられてきた女性が王子様に見初められるという、骨子はまんまシンデレラな上に、清霞のみならず気弱な幼馴染や母の実家に連なる謎めいた男性などからこぞって好意を持たれる乙女ゲーム展開。だがこれがよく考えられていて、事情が事情だけに読者は彼女に反感を持つことなく、むしろ応援してしまうのだ。

 さらに、1巻の時点で清霞と美世が相思相愛なのはわかっているのにふたりを次々と障害が襲い、なかなか「幸せな結婚」に行きつかないのもハラハラポイント。めめは原作を読むにあたって「幸せな結婚をするんだろうな」と思ったそうだが(素直か!)、そうはいかないのだ。その障害というのが国を揺るがす異能バトルから厄介な姑までと振り幅が広すぎてまったく飽きさせない。


イラスト・タテノカズヒロ

■原作2巻分を並行させて描いた映画の構成に注目!

 その強敵異能者や姑は3巻以降の登場なので映画には出てこないが、1、2巻にも戦う相手はきっちり存在している。興味深いのは、原作ではふたつの巻に分けられていたエピソードが映画では並行して描かれたことだ。著者インタビューによると、もともとこの2巻のエピソードは同時進行で展開させるつもりだったが、わかりづらくなるのでやめたとのこと。つまり映画の構成は著者の当初の予定に沿ったものなのである。

 原作1巻では、久堂家に嫁いだ(と書いているが、この段階ではまだ婚約者候補)美世が、清霞との暮らしの中でそれまで失っていた人間性を少しずつ取り戻していく様子が描かれる。彼女をわがものにしようとする他家の陰謀も登場するが、眼目は美世の再生の萌芽だ。

 第2巻は、封じられていたかつての異能者の墓が暴かれ、陸軍の対異能特殊部隊の隊長である清霞(今初めて書いたけどそうなんです)がそれに立ち向かう。一方、美世の亡き母の実家である薄刃家が登場。美世に異能が発現しない理由を含め、物語は大きく動き出す。

 映画ではこれを並行して描くことで、異能バトルにより傷ついた清霞を異能に目覚めた美世が救い、それが彼女自身の成長とふたりの絆の強さを表すという構成になっていた。その大きな流れと決着は原作通りなのだが、終盤の展開が全然違う! 原作を読んでても映画のこの展開は新鮮に楽しめるぞ。原作にはない異能バトルのアクションは見応え充分。いやあ、映像ならではだなあ。逆に映画だけ見た人が原作を読むと、やっぱりその違いに驚くはずだ。

 でもねでもね、アクションがあろうとバトルがあろうと、この物語の粋はふたりのロマンスなのよ! 美世の生い立ちが辛い分、恋愛の方は最初から愛されがほとばしっててストレスがないのがいい。なんといっても、冷酷無慈悲のはずの清霞がデレるのが早い! 「俺が死ねと言ったら死ね」とか、美世の作ったご飯を「毒でも入れたか」とか、めちゃくちゃなこと言うのに、それに対する美世の反応を見て「あれ? 俺なんか間違った?」って内心キョドるのが可愛くてな!

 そこで、めめですよ。原作では清霞が内心キョドってるのが文章で丁寧に描写されるから、なんだよ清霞いいやつなんじゃーん、って読者にはすぐわかるんだけど、映画ではそこまでモノローグは多用できない。それを補完するのが清霞を演じるめめの表情。冷たい表情の中に、「あれ? 俺なんか間違った?」ってのが目元と口元に現れるのね。その一瞬の可愛さたるや。クールとキュートのハイブリッドよ。

■東西のジャニーズが演じる「立場を超えた幼馴染」

 自己評価がマリアナ海溝並みに低い美世を理解しようとし、自信を持たせようとし、愛しみ続ける清霞の強さは本書の大きな魅力だが、めめ担さんたちのみならずジャニヲタさんに注目してほしいのは、清霞の職場での場面。

 原作では職場の場面は清霞中心なんだけど、映画では全体が見渡せる。あの隊員たちのわちゃわちゃ具合がね! ジャニーズJr.の楽屋かな?という楽しさなのよ。でもそれがまさかあんなことになるとは(原作と異なる展開なので具体的には言いません)。あんな切ないアクションシーンある? しかも口火を切るのがJr.の佐藤新くんという……。

 もうひとつの注目箇所は、なにわ男子のりゅちぇが演じた皇太子、堯人(たかいひと)だ。天啓と呼ばれる、未来を見る力を持つ。だからこそ辛い未来に苦しんでしまう。清霞にとっては守るべき対象であり従うべき対象でもある。と同時に立場を超えた幼馴染でもあるというブロマンス的萌えシチュ! 

 そんな堯人と清霞を、グループとしての個性がまったく違う東西のジャニーズが演じていることに「物語」を感じてしまうんだなあ。かたや帝都を統べる最高権力者として、かたや現場で異能と戦う軍人として、持ち場は違えど、手段は違えど、目指すところは帝都の平和。手を携えて異なる場所で異なる手段で同じゴールを目指すふたりに、現実の彼らを重ねて萌え散らかしてしまった。そのめめの隊にはJr.の佐藤くんがいるってのがまたね!
 
 そういう視点で原作の3巻以降を読むと、きっと楽しいぞ。実は原作5巻ではなんと堯人が女子会(!?)に参加する場面があるのだ。「心を女人にして」参加するから「気軽に『タカ子』と呼んでくれてもよい」なんて言うのだ。これ、りゅちぇで見たい! 清霞は清霞で、とにかく美世が愛おしくてたまらず、しょーもないことにヤキモチを妬いたりするのがニヤニヤしちゃうくらい可愛い。これもめめで見てみたい。そして3巻以降はさらに強大な敵が彼らを襲うわけで……つまるところ、映画続編熱烈希望!

大矢博子
書評家。著書に「読み出したら止まらない!女子ミステリーマストリード100」など。小学生でフォーリーブスにハマったのを機に、ジャニーズを見つめ続けて40年。現在は嵐のニノ担。

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