大矢博子 ジャニ読みブックガイド
2018/11/07

タッキーと翼が並び立つ! 大河ドラマ「義経」の2人の関係に納得

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 Kissで目覚めてCHA-CHAのリズムの皆さん、こんにちは。ジャニーズ出演ドラマ/映画の原作小説を紹介するこのコラム、前回の「元禄繚乱」に続くタキツバ特集第2弾はもちろん大河ドラマ「義経」だ! 2005年にタッキーが主役を務め、翼のサプライズ共演もあった「義経」は、11月5日からCSのチャンネル銀河で再放送も始まったぞ。

■滝沢秀明・主演、今井翼・出演!「義経」

 源義経といえば、日本史上に登場した初のスターにして悲劇のヒーローである。大河ドラマの題材になるのは1966年「源義経」に続く2度めで、前回は歌舞伎界きっての端正なマスクを誇る音羽屋のプリンス・尾上菊之助(7代目尾上菊五郎)が当時最年少で演じた。その最年少記録を同じ義経で更新したのが、ジャニーズJr.のプリンス、タッキーだ。

 源氏の血を引くものとして殺されるところを、平清盛の温情で鞍馬寺に預けられた義経。長じて、個性的な仲間たちとともに父の仇・平氏を華々しく討つ──というのがメインの筋。だが源氏の頭領である兄・源頼朝との関係に亀裂が入り、敵として追われ奥州・平泉で自刃。軍事の天才でありながら政治にあまりに不器用だったヒーローの最期は、彼の官位だった「判官」にちなんで「判官贔屓」という言葉が生まれるほどの同情を集めた。

 原作小説は宮尾登美子の『義経』(新潮文庫)と『宮尾本 平家物語』(文春文庫)。さらに1966年の「源義経」の原作だった村上元三『源義経』(講談社文庫他)の設定も一部、踏襲されている。もちろん、大元の原作は古典の軍記物「平家物語」と「義経記」だ。

 義経の有名な見せ場といえば一ノ谷・屋島・壇ノ浦という三つの戦いだ。一ノ谷では急斜面を馬で駆け下りる「鵯越(ひよどりごえ)」、壇ノ浦では船から船に飛び渡る「八艘飛び」が義経活躍のシンボルとして知られている。その中で唯一、義経以外の人物がヒーローを務めたのが屋島の合戦。翼が演じた那須与一宗高である。与一は長い平家物語の中でこの一場面しか出番がない。にもかかわらず、今日に至るまで弓の名手としてその名が伝えられているほど、鮮烈にして印象深い場面だ。


イラスト・タテノカズヒロ

■原作とドラマ、屋島の戦いはここが違う

 現在の香川県高松市にある屋島。今は埋め立てられ陸続きになっているが、当時は島だった。そこで義経軍の攻撃を受けた平氏は船で海へ逃れる。そのとき、船団の中から小舟が一艘現れ、そこには扇を高く掲げた女性が乗っていた。これを射ることのできる猛者はいるか、という平氏からの挑発だ。これに源氏の威信をかけて挑戦したのが弱冠20歳の那須与一だった。

 ドラマでは腕に覚えのある者たちが「自分にやらせて下さい!」と口々に言う中で、那須与一だけが「それがしには無理かと存じます」「海風が山肌に当たって吹き返し、扇は波に揺れ、山野にて鳥を射落すのとは勝手が違いまする」と尻込みする。それを見たタッキー義経、「謙虚さは用心深さとなる。物事を見極めようとする」と彼を抜擢、翼与一は見事その期待に答えてみせる──と描かれていた。

 だが実は原作では、与一が「自信がない」と辞退するまでは同じだが、そこからが違う。義経は「私の命令に叛(そむ)くとは何たることだ。従えないならば、これよりただちに鎌倉へ引返すべし」(宮尾登美子『義経』)と叱り飛ばすのである。義経が短気という描写はオリジナルの「平家物語」に多くあり、この場面でも「判官大きに怒つて」と書かれている。原作の与一はしぶしぶ引き受け、いざ射る段になってからとにかく神に祈りまくるのだ。

 さらにドラマでは扇を射落として終わりだったが、原作では続きがある。与一の腕に感嘆した平氏の兵が舞を踊る。ところが義経は与一に命じてこの兵を射殺すのだ。え、待って、それ残酷すぎない? 無粋じゃない? それをきっかけに再び合戦が始まる。ドラマのタッキーは優しいリーダーだが、原作では短気で残酷なブラック義経の顔が時折覗くのである。

 もうひとつ、原作の屋島の戦いには興味深い違いがある。ドラマでは小舟で扇を持っていたのは義経の異父妹・能子(後藤真希)だったが、原作では玉虫という名の美しき雑仕女(女性の召使い)だったとされている。そして何と、のちに那須与一がこの玉虫を探し出し、妻に迎えたという話が残っているのだという。何それロマンティック! ブラック義経とロマンティック与一、この組み合わせで屋島の続きを見てみたいぞ!

■義経とタッキー、重なる「宿命」

 2004年、NHK演出家の黛りんたろう氏が、プロデューサーや脚本家、そして原作者の宮尾登美子さんらとタッキーの舞台「ドリームボーイ」を見に行った。宮尾さんは大興奮! そして黛氏は著書『大河ドラマ「義経」が出来るまで』(春風社)にタッキーの印象をこう書いている。

「美しい! 美しいということはそれを身に帯びた者にとっては宿命なのだ。/彼はこの世で美しくあることと引き換えに、スターの苛酷な宿命を背負った。その宿命を甘んじて受け入れ、それを生きている。どこか義経の宿命とオーバーラップする」「滝沢さんはスターであるために、スターとしての光の部分と陰の部分を合わせもっている。光が強いからこそ陰も濃いということが義経にもあったのではないか」

 黛氏がタッキーと義経を重ねたもの。それは「背負ったものの大きさ」だ。源氏の御曹司という立場、慕ってくれる家来や仲間、彼を利用しようとする朝廷、幼い自分を助けてくれた平家を討つという運命、兄との対立……20代の若さでそれらすべてをひとりで背負った義経は、31歳で人生を退場した。翻ってタッキーがJr.時代から背負ってきたものの大きさは、ファンならご存知の通り。10代の頃からJr.の黄金期を率いて、舞台演出に後輩育成にと八艘飛びならぬ八面六臂の活躍を見せていたタッキー。彼はその宿命を背負ったまま、今年いっぱいで表舞台を去る。まさに義経ではないか。

 そんなタッキーの義経を、翼が特別主演という形でサポートしたことは忘れてはならない。たった一度だけ、10分程度の共演である。コンビの相方が出演するという話題性や、ファンサービスという狙いも、もちろんあっただろう。だが、弁慶や伊勢三郎といったレギュラーではなく、一度きりの那須与一だったのには別の理由があるのではないか。

 弁慶や三郎は「家来」であり「脇役」だ。翻って与一は、もちろん義経軍の家来ではあるのだけれど、三大合戦のひとつにおいて唯一義経を超えたヒーローだった。タキツバを主従として描くのではなく、その場の主役たる対等且つ最強の武将として描く。しかも原作のように義経が与一を叱り飛ばすのではなく、その力を認め、信頼して任せる。出番は一度だけでも、そういうメンバーが常に義経を支えているという象徴だ。それはタッキーの後ろに、多くのJr.がいることをも連想させたのである。

【ジャニーズはみだしコラム】

 ジャニーズで初めて大河ドラマの主役を務めたのは、1993年「琉球の風」での東山紀之。その後、1998年「徳川慶喜」でモッくんこと本木雅弘が徳川慶喜を、2004年「新選組!」で香取慎吾が近藤勇を演じた。タッキーの「義経」は2年連続4回目のジャニーズ主演大河となる。
 以降、岡田准一主演の2014年「軍師官兵衛」を最後にジャニーズ主演は途切れているが、今年の「西郷どん」で錦戸亮が主役の弟を演じている他、来年2019年の「いだてん〜東京オリムピック噺」には主人公の親友にしてライバルという重要な役で生田斗真の出演が決まっている。
 主役でなくとも、今年は誰がどんな役で出るかな?とワクワクするのもジャニオタの楽しみなのだ。最近では「真田丸」で元男闘呼組の高橋和也と岡本健一が一瞬の共演を果たすという、往年のファンにはたまらないプレゼントもあったし!

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