南沢奈央の読書日記
2019/11/29

かわいい女の子が好き

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撮影:南沢奈央

 かわいい女の子が好き、というのは、男性に限らず女性にもある。
 わたしも友人と、かっこいい男の子の話よりもかわいい女の子の話で盛り上がることがある。最後には「かわいい女の子見つけたら教えてね」で終わる。
 かわいい女の子を見ると、感情が動くのだ。だからといって、同性愛というわけではなくて、そこにあるのは憧れのような癒しのような。この感情は一体何なのだろう、と考えたことがあった。
 柴崎友香さんの『主題歌』の主人公もまったく同じことを考えている。
「女の子を見るのが好きなのは、男性俳優やジャニーズ事務所の誰彼が好きだというのと同じことなのか違うことなのか」。
 主人公・実加は同棲している彼氏の前でも、グラビア誌の「永遠のセクシー女優名鑑」に釘付けになってしまうような、かわいい女の子にアンテナを張っている女性。実加の周りにも同じタイプの友人や同僚が多く、かわいい女の子好きな女性たちによる、かわいい女の子談義が繰り広げられる。それがまた良い。何気ないガールズトークが、リアルで親近感が湧く。読んでいるうちに、いつの間にかわたしも「分かる分かる」と会話に加わっているような感覚になっていた。

 ただ見た目がかわいいだけでは駄目。実加の同僚である小田ちゃんは、女子アナと読者モデルを「真ん中で勝負してないやん」とばっさり斬る。よく言えば世渡り上手、悪く言えば計算高いというのが彼女の言い分だ。
 それに引き換え、最近バイトとして会社に入ってきた愛は好感度がかなり高い。時々、お土産にお菓子や雑貨を持ってきてくれる。性格も素直で、肩幅や困った感じの眉毛もかわいい。かわいい女の子談義にいまいち乗れない同僚・いつ子も、愛が来てからは仕事の時間が楽しくなったのは確かだと言う。
 かわいい女の子にはきっと、人を楽しくさせるとか、気持ちを明るくさせるという力があるんだと思う。
 わたしが女性の写真集を眺めるのが好きなのは、その為かもしれない。特にお気に入りは、広末涼子さんの『teens 1996-2000』という10代最後の5年間を収めた写真集。事務所に入りたての頃、ポーズや表情など、写真の撮られ方を勉強するように、マネージャーさんから渡されたものだった。
 日常を切り取ったような何気ない姿、力の抜けた無邪気な表情……。そこにいる広末さんと同じように、10代最後の5年に突入した頃だったわたしは、いろんな意味でドキドキした。今回、久々にゆっくり眺めてみたけれど、やっぱり「かわいいなぁ」と声が漏れてしまった。
『主題歌』の女性たちに、ぜひともこの写真集を紹介したいものだ。で、きっと「かわいい!」と一緒にはしゃいでくれるだろう。その姿はみんなかわいいだろうなぁ。それを想像するだけで、幸せな気持ちになるのだ。

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