南沢奈央の読書日記
2018/11/30

書く瞑想

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撮影:南沢奈央

 ひさしぶりに寝坊をしてしまった。
 11時に家を出れば間に合うくらいだったから、まったく朝が早いわけではない。仕事ではない用事だということもあってか、緊張感が欠けていたのかもしれない。目覚めたら、11時だった。
 寝るのが遅くなってしまっても、9時くらいには自然と目が覚めるリズムになっていたから、昼近くまで寝ていられたことに驚いた。まぁそんな悠長なことは言っていられず、とにかく顔だけ洗って、全速力の着替えをしていたら、インターホンが鳴った。前日不在の間に来た郵便の再配達だった。予定通り目覚めて家を出ていたら、数分のすれ違いでまた受け取れなかったことになる。なんか、ラッキー。なんてまた悠長なことは言っていられない。急いで駅へ向かった。
 わたしがいくら急いでも電車は急いでくれない。だからどうしようもないのは分かっているのだけど、時計と路線図を見比べたりなんかして、電車移動の30分間、1ページも本を読めなかった。息を切らせて、15分遅れで到着した。
 その用事の後に、ふたつ目の用事を入れていた。想定では、用事1と2の間には、1時間くらい空き時間ができるくらいの余裕は見ていたつもりだった。だが、そもそも15分遅れでスタートしたのと、わたしの時間の読みが甘いのとで、用事2には20分遅れて行くことになった。時間をきっちり決めていた約束ではなかったのだけど、自分で決めた時間通りに動けないことに自分だけが焦っていた。
 そして最後にもうひとつ、用事3も、結果30分遅れのスタートになった。これに関しては自分ではなく友人の遅れが理由なのだけど、焦る気持ちは収まらなかった。
 その日は終始、とにかくそわそわしっぱなしだった。やるべきことや時間に追われて、心拍数高め、呼吸浅め。せっかくの休日だったのに、なんだか疲れ果てて、電気をつけたまま寝落ちしていた。

 最近、心が乱れている。
 当たり前のように、『がんばりすぎない休み方』を手に取っていたのも、その表れだろう。
 それにしても、ひとつの本屋さんで3か所に平積みされているということは、わたしと同じように心にゆとりがない人が多いのだろうか……。
 みなさんは、以下の項目に思い当たるものはありますか。

・部屋が散らかっている
・最近体重計に乗っていない
・天気の変化や道端の花などに気づかない

 1か月前断捨離を決意してから、物が減っているはずなのに、断捨離する前より部屋に物が散乱している。脱衣所にある体重計を毎日横目で見ながら、お風呂場に入る。最近外で、雨に降られることが多い。
「心と時間が整理されていないときに起きがちな、心の乱れのサイン」、わたしはすべてに当てはまっている。自覚はしていたけどこうして再確認すると、どうにかしたいと、本を持つ手に力が入る。

 自分に出来そうな、“心とからだを健やかに保つためのヒント”を探す。
「植物を育てる」ことが確かに良いというのは、以前家庭菜園で野菜を作った時に実感した。自分以外のことに目を向けるゆとりができる上に、生きている物が近くにあるだけで自分にも生命力が湧いてくるようだった。ただ、寒くなってきたから、今から家庭菜園を始めるのは少し億劫だ。
 1日に3~4回はハンドクリームを使っているこの季節は、「手に感謝しながらハンドクリームを塗る」ことから始めるのが良さそうだ。何かをしながら塗るのではなく、手の感覚に集中して、束の間雑念から解き放たれよう。ボルダリングで皮が剥けてしまった手の平を労わってあげようと思う。
 最近気づくと、山登りの時に撮った、道中や山頂からの景色の写真を見返していることが多い。これはもしかしたら、「自分だけの秘密の避難場所」になっているのかもしれない。自分なりの、心が落ち着く場所や物を持っていると、せかせかした心を和らげることができるということで、本書では景色や音楽、写真を例に挙げている。わたしにとって山登りの写真は、“空気が美味しい”とか “達成感” “楽しい”といったポジティブな感情の記憶とセットになっているから、落ち着かない時こそ、これからは積極的に見てみたい。

 こうして見ていると、案外、すでにやっていることや一度は経験済みのことが結構あった。何気ない普段の行動が、意識ひとつ変えるだけで、心が休まる方法になる。もちろん、本書の中のヒントには、自分には出来ていないから“やってみよう!”というものもたくさんあったけれど、このやったことがあることから入っていくのが、“がんばりすぎない”コツだろう。

 今この瞬間に集中して、自分を見つめ直して、思い浮かんだ言葉を書き出していく。
 今回は読書日記を通して、思考をクリアにする「書く瞑想」が出来た気がする。
 ついに始まった舞台稽古での胸のドキドキの理由が、緊張から高揚に少しずつ変わり始めている。

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