南沢奈央の読書日記
2017/04/28

新聞は飲み込まれるのか

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撮影:南沢奈央

 ネットは情報の海だ。“ネットサーフィン”とはよく言ったものだ。つい数年前まで、サーフィンを楽しむことができるのは、自宅でパソコンを使いこなせる一部の人間だけだと思っていた。スマホが普及した今、パソコンに馴染みがなかった高齢者や小学生でも、いつでも簡単に情報の海に飛び込むことができるようになった。
 そんな時代の流れとともに、紙媒体の衰退が進んでいるのは言うまでもない。つい最近、よく本の貸し借りをしていた友人からお勧めの本を紹介された。これまで通り、今度貸してとお願いすると、「電子書籍で読んだから貸せない」と言われてしまった。その時、自分の周りからもすでに紙の本が減ってきているのだとようやく気付いた。
 新聞は尚更だ。発行部数が激減している。ネットではニュースが物凄い速さで更新され続ける。ニュース画面を閉じて一通メールを返信している間にも、ニュースのラインナップが変わっている。先日ドラマのPRイベントをした際には、帰りの車の中ではすでにネット上で、つい数分前の自分のコメントや写真を見ることができた。するとすぐに友人から“ニュース見たよ”と連絡が来た。情報を発信するスピードが速く、数も多い分、受け取る側も同様なのだ。いやむしろ逆かもしれない。情報を求める人の数やスピードに、ネットが対応しているのか。
 一体、新聞の存在意義とは何なのだろうか。堂場瞬一さんの「社長室の冬」は、そんな避けては通れない厳しい現実問題を突き付ける。まさにメディアが向き合わねばならないテーマに、今回WOWOWの連続ドラマW「社長室の冬―巨大新聞社を獲る男―」(4月30日スタート毎週日曜よる10時放送)が挑む。

 経営難に陥る日本の大手新聞社・日本新報がアメリカの巨大ネットショッピング会社・AMCに身売りをしようという話が持ち上がる。交渉に現れたのは、AMC日本法人社長であり、元日本新報の記者といういわく付きの青井聡太。そしてそこに立ち向かうのは、日本新報の社長の右腕として奔走する南康祐。青井は身売りの条件として、新聞にとっては死を意味するような、“ある条件”を提示する。会社を守るのか、社員を守るのか。権力や伝統を、それとも自分の身を守るのか。それぞれの思惑がぶつかり合いながら、最大の危機に瀕した新聞社の未来を懸けた、人間ドラマが繰り広げられていく。
 わたしは今回、日本新報の社長室勤務の酒井優奈を演じさせてもらった。実家が日本新報の新聞販売店で、物心ついたときから新聞に囲まれて育ってきた、という原作にはない設定が付加され、一層“新聞愛”“家族愛”の強い人物になっている。そして、交渉で深くなっている南の眉間のシワをほぐす役割も、優奈である。個人的には、南と優奈の関係の展開にもぜひ注目していただきたい。

 こうして自分の出演する作品について考えてみると、どうしても見方がその演じる役に偏ってしまうのだが、わたしは優奈を通して新聞に対する考えが変わった。会社を経営する人、記事を書く人、それを印刷する人、配達する人……、とにかく大勢の人が一つの新聞を作るのに関わっていて、リレーのようにどんどん想いが渡されていって、最終的に手元に届く新聞はものすごい想いの乗ったものなのだ。それは紙の新聞という“モノ”を作ってきた人間の誇るべき部分だし、強みだろう。
 とは言え、時代は凄まじいスピードで変化している。今だってわたしもこうしてネット上で発信している。サーフィンするだけではなく、情報の海そのものをどんどん大きくする力をも、みなが持ってしまった。何年後かに、この「社長室の冬」は現実の話となるかもしれない。その時に荒波に立ち向う、新聞の力を信じたい。人の想いの乗ったモノの息を絶やしてはいけない。

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