南沢奈央の読書日記
2017/06/16

欲張りナオさん

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撮影:南沢奈央

 欲しいものは何ですか?
 昨日15日が誕生日だったわたし。有難いことに色んな人がそう聞いてくれた。だけど、……告白します、正直言って、特に欲しいものがない。「ない!」と即答するのも申し訳ないような気がするし、一応「ええと……」と考えてみるけれど、思い浮かぶのは、額縁を飾るための画鋲と、電動歯ブラシの替えブラシくらいだ。
 年々、この質問に悩まされるようになってきている。今生活に必要な、実用的なものしか考えつかないのだ。あるいは、演技力とか文才とか、自分の努力でしか得られないもの。社交性が欲しいなんて言ったら、悩み相談になってしまう。
 30代40代になってくると、もっと漠然としたものになってくるようである。益田ミリさんの「ほしいものはなんですか?」に登場する、35歳独身のタエ子さんの欲しいものは“保証”、40歳専業主婦のミナ子さんは“存在感”。ああ、タエ子さんやミナ子さんと同じようなことを言っている数年後の自分の姿が見える……。自分と似ていると一瞬ホッとしたのは否めないけれど、このまま欲しいものがないなんていいのだろうか。

 益田ミリさんの描く、ゆるく温かいタッチの絵と何気ない会話が妙に心に刺さってくる。一体わたしは、何が欲しくて毎日仕事をしているのだろう。何になりたくて、生きているのだろう。
 子どもの頃は、「あれが欲しい!」「これになりたい!」と声高らかに言えた。好みがコロコロ変わっても、たとえ無謀なことを夢見ても、否定する人はいなかった。いつからだろう、客観的に自分を見てしまうようになったのは。今の自分に本当に必要だろうか。現実的に叶えるのは難しいのではないか。周りからどう思われるだろうか。自分の欲を抑え込むうちに、わたしの中から“欲”がどんどんなくなっていった。
 ……と、悩めるタエ子さんやミナ子さんと共に、自分の“欲”について考えながら読んだ。すると不思議なことに本を閉じてみると、自分には案外、“欲”があるのかも、と思えてくる。ただの悩みだと思っていたものも、今ならこう言える。“演技がうまくなりたい”“魅力的な文章を書きたい”“色んな人と話をしたい”。だから、このために“時間や労力を費やしていきたい”。なんだ、わたしの中には、まだまだ貪欲な自分がいそうだ。
 物欲はないつもりだけど、欲しいものは?と聞かれて「何も要らない!」と言えないのは、“欲張り”でしょうか。まあ、年に一度の誕生日くらいは、大目に見てください。やっぱり、誕生日プレゼントをもらえて、とっても嬉しかったです!

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